2016年、新年明けましておめでとうございます。今年最初の記事では、2016年のコンテンツマーケティングのトレンド予測をしたいと思います。
“コンテンツマーケティング”という言葉は、今ではすっかり定着したマーケティング用語ですが、元々は、2007年にコンテンツマーケティングのエバンジェリスト、ジョー・ピューリッチが創設したコンテンツマーケティング・インスティテュート(CMI、Content Marketing Institute)が作った造語です。
USのマーケティングトレンドを受け、日本にも”コンテンツマーケティング”の言葉は少しずつ浸透してきましたが、Googleトレンドで認識されるのは、2012年6月がはじまりです。その後、2013年6月以降は2015年6月まで継続的に増え続けていることから、日本で、マーケティング用語として定着してきたのは2013年頃であると考えられます。

Googleトレンドによる”コンテンツマーケティング”キーワードの推移
2013年から2015年にかけてのコンテンツマーケティングの取組み変移
2016年のコンテンツマーケティング予測をするに当たり、日本における、ここ3年(2013年〜2015年)の推移について、振り返ってみます。
当社はコンテンツマーケティング&SEO管理プラットフォーム「GinzaMetrics」を提供している立ち位置上、様々な企業のコンテンツマーケティングの取り組みについて、目の当たりにし、また、様々なイベント・セミナー、ブログを通じて発信してきました。主に自然検索・ソーシャルメディア経由の流入の取り組みについてご支援していますが、その観点から紹介していきたいと思います。
2013年はコンテンツマーケティングの概念を社内啓蒙した時期
もちろんコンテンツマーケティングの用語が定着する以前から、実質的にコンテンツマーケティングに取り組む企業はありましたが、2013年の日本は、USの先端マーケティングトレンドの情報収集をしている一部のマーケターが、コンテンツマーケティングの流れが近い将来日本にも来ると予測し、自社での推進のために、社内啓蒙に取り組んでいた時期だと言えます。
“コンテンツを通じて潜在ユーザーとの関係性を構築し、顧客化に向けて育成していく”という「コンテンツマーケティングの概念」の浸透を試みている時期で、具体的にどのようにコンテンツを展開していくのか、型と言えるものはまだありませんでした。先進的な企業によるオウンドメディアの展開が一部ありましたが、サービスサイトのドメイン配下で特集コンテンツを設けたり、ダウンロードコンテンツを通じメールアドレスを取得し、メルマガでコンテンツを届けたりと、各社がどのようにコンテンツマーケティングへ取り組んでいくか、模索していたと言えるでしょう。
その当時、コンテンツマーケティングに取り組もうとしていたマーケターから聞かれた言葉は下記のようなものでした。
「広告での成果に、限界を感じ始めている。昨対比102%なら、予算次第で達成できるかもしれない。しかし、120%や150%の成果は見込めない。何か別のやり方が必要だ。それがコンテンツマーケティングだと思う。」
「目の前の成果としてニーズが健在化したユーザーの刈り取りをするだけではなく、10年後の顧客をどう育成するかを考えなくてはいけない。」
「広告を出稿していた、ターゲットユーザー向けのニッチな領域のメディアがなくなってしまった。潜在層とのコミュニケーションを維持するため、自社でメディアを作る必要性に迫られている。」
2014年は様々な業界でオウンドメディア展開がはじまった時期
2014年は、様々な業界の先進的な企業が、コンテンツマーケティングとして継続的なコンテンツ展開に着手しはじめた時期であると言えます。更新性の高いコンテンツ展開と、サービスサイトの制約(システムリソース、デザイン、人的リソース等)に依存しないコンテンツマーケティングの型として、オウンドメディアの考え方が定着してきました。
2014年にリリースしたオウンドメディアの一部事例として、業界別に下記が挙げられます。
旅行業界:エクスペディア社「We❤︎Expedia」

参照:
https://welove.expedia.co.jp
保険業界: ライフネット生命社「ライフネットジャーナルオンライン」

参照:
https://media.lifenet-seimei.co.jp
不動産業界:ヤフー社「おうちマガジン」

参照:
https://realestate.yahoo.co.jp/magazine/
この時期の成果指標(KPI)の考え方としては、コンテンツを増やすことで、自然検索/ソーシャルメディア経由での流入を増やすことを重要視する傾向があったと言えます。また、推進する体制としては、やる気のある担当者に依存する面も強く、組織的な活動とすることに対する課題があったと見受けられました。
2015年はオウンドメディアでのコンテンツマーケティング展開が拡大
2015年になると、既に展開している企業を追いかけるように、オウンドメディアでコンテンツマーケティングに取り組む企業が拡大します。未着手の企業担当者からは「当社も早くオウンドメディアをはじめないといけないと思っているんです。」という声が聞かれるようになりました。
コンテンツの展開方法として、月に数百、数千とコンテンツを量産してSERPsの面を取りに行く企業もあれば、厳選した数百のキーワードでのSEO上位表示を目指して取り組む企業もあり、各社にとってのオウンドメディアの位置付けが明確化してきたように感じます。
成果指標(KPI)としては、”まず着手してみよう”だった2014年に比べ、コンテンツへの流入を増やすだけではなく、潜在ユーザーとのエンゲージメントを高める取り組みを重要視する傾向が出てきたと言えるでしょう。
参考記事:
コンテンツマーケティングの成果指標(KPI)で重要視されるエンゲージメントの位置付けとは
https://demandsphere.jp/blog/content-marketing-engagement
コンテンツマーケティングで来訪者とのエンゲージメントを高めるTips事例40選(資料無料ダウンロード)
https://demandsphere.jp/blog/ebook-engagement-tips
また、運用するチーム体制/組織が整備されてきたのも2015年の特徴の一つでした。やる気のある担当者個人に依るところが多かった2014年に比べ、チーム/組織としてオペレーションの構築がされ、リリース後のコンテンツのパフォーマンスを確認するフローが定常化するようになってきたと言えます。
参考記事:
カスタムダッシュボードを使ったコンテンツマーケティング、SEOのオペレーション化
https://demandsphere.jp/blog/custom-dashboard-operation
コンテンツを活用したSEOの運用上のポイント
https://demandsphere.jp/blog/seo-operation-with-contents
2016年の予測、コンテンツマーケティングはインテリジェンス重視へ
2013年から2015年のコンテンツマーケティング取組みが推移してきたのを紹介しましたが、2016年はこれまでの経緯を受け、コンテンツマーケティングの精度を高める動きになると予測されます。2016年に向けたUSのコンテンツマーケティングの記事においても”インテリジェンス”という表現が多く見られるようになりました。
Search Engine Watch

参照:
https://searchenginewatch.com/sew/opinion/2440051/intelligent-content-creation-in-2016-engagement-and-experiences
CONTENT MARKETING INSTITUTE
「What Is Intelligent Content?」

参照:
https://contentmarketinginstitute.com/what-is-intelligent-content/
では具体的にどのようなインテリジェンスが求められるのか、下記3つの視点になると考えます。
・単なるコンテンツ量産ではなく、より戦略的にコンテンツを設計
・データドリブン重視、コンテンツの成果を測るKPI設定の多様化
・成果を出すために必要なオペレーション/チームの構築
それぞれが何を指しているのかについて、紹介していきます。
単なるコンテンツ量産ではなく、より戦略的にコンテンツを設計
オウンドメディア立ち上げ時には、コンテンツを量産して、メディアとしての体裁を整える必要があります。また、競合他社との戦いのため、必要とされるキーワードを洗い出してコンテンツを量産する、という傾向もあることでしょう。しかし、オウンドメディアを運営する企業が増えてきて、共通して話題となるのは、流入だけではない、その先にある潜在層との関係性構築の議論です。
コンテンツのKPI(成果指標)を、一律に流入を得るためだけとするのではなく、ターゲットユーザー毎にコンテンツを設計し、それを測るKPIを設ける取り組みがはじまりつつあります。
具体例として、先日インタビューをさせていただいたインテリジェンス社の転職サイトDODA(デューダ)が展開するオウンドメディア「キャリアコンパス」を挙げたいと思います。
「キャリアコンパス」では、コンテンツのターゲットを転職意欲の高低・職種・年齢層の軸で9つのカテゴリに分類しています。そして、それぞれのカテゴリに即したコンテンツを企画して、成果指標を持っています。
(詳細については下記インタビュー記事をご参照ください。)
インテリジェンス社の転職サイトDODA(デューダ)オウンドメディア運用〜コンテンツ設計から運用まで〜
https://demandsphere.jp/blog/intelligence-ownedmedia
また、各コンテンツをどのチャネルでディストリビュートしていくかについても、コンテンツ設計時点で考慮されることとなることでしょう。
データドリブン重視、コンテンツの成果を測るKPI設定の多様化
より戦略的にコンテンツを設計することに伴い、KPIの設定も多様化していくことでしょう。
具体的なコンテンツのイメージとして下記が挙げられます。
・新規接点のためのコンテンツ
・リピート訪問してもらうためのコンテンツ
・デマンドジェネレーションのためのコンテンツ
・エンゲージメントを高めるためのコンテンツ
・連絡先を取得するためのコンテンツ
・コンバージョンのためのコンテンツ
コンテンツの成果指標を一律に流入としたのでは、それぞれの目的を果たしているのか掴めなくなるため、KPIの多様化が必要とされます。
素早いPDCAを回していくためには、最新情報の取得と、多様化するKPI指標を簡易に読み取るための仕組みが必要となります。コンテンツをリリース後、どのタイミングでどのように効果を測定するのか、データをどう蓄積していくのか、レポートは誰にいつ報告/共有するのか。
データドリブンな取り組みとは、データを管理し、インサイトを読み取るためのプラットフォームの整備も同時に必要となることを意味します。
成果を出すために必要なオペレーション/チームの構築
特にオウンドメディアで展開するコンテンツマーケティングは、一時的なプロジェクトではなく、定常的に発生する業務となります。戦略的にコンテンツを設計し、リリースしたコンテンツの成果を測り、コンテンツ設計改善続けていくためには、オペレーションの構築とそれを可能にするチーム作りが2015年以上に重要視されると考えられます。
チーム作りにおいては、コンテンツマーケティング・インスティテュート(CMI、Content Marketing Institute)の2016年コンテンツマーケティング予測記事(What Content Marketing Will Look Like in 2016: 40+ Predictions)においても、ソーシャルメディアチーム、デジタルマーケティングチーム等の組織間の壁をなくし、構築することが必要だと触れられています。

参照:
https://contentmarketinginstitute.com/2015/12/content-marketing-predictions-2016/