当社CEOレイ・グリセルフーバーが、2015年4月16日にad:tech China 2015にスピーカーとして登壇しました。
レイが感じた中国のコンテンツマーケティングの状況について、対談形式の動画にまとめましたので、ご覧下さい。
全編英語での会話のため、日本語訳も用意しました。そちらもご参考にして下さい。
【動画】Successful Global Marketing in China
VIDEO
【日本語訳】Successful Global Marketing in China
中国のコンテンツマーケティング事情
Karen : 中国でもコンテンツマーケティングしていることに驚きました。中国の現状について教えてください。
Ray : 中国は知っての通り巨大な市場ですが、私もパネルディスカッションに行って、それまでのイメージと異なっていて驚きました。
中国にもコンテンツはたくさんありますし、質の高いコンテンツもたくさんあります。ただし、我々がアメリカで行っているコンテンツマーケティングとは少し異なります。
Karen : アメリカと中国のコンテンツマーケティングはどの辺が異なりますか?アメリカでは、役立つ情報を、自社を売り込まずにコンテンツ配信していくことが求められますが、中国でも同じアプローチ方法なのでしょうか?
Ray : いいえ。理由の一つは、中国のインターネットは従量課金制が残っていることです。
USをはじめ多くの市場では通信量をほとんど気にする必要が無いので、役立つコンテンツであることが最初に求められますが、中国では通信量への配慮が必要です。
また、中国では、コンテンツマーケティングと言うべきか、コンテンツオプティマイゼーションと言った方が良いか微妙なところでもあります。
というのも、自社サイトやタオバオなどのストアでのコンバージョンが非常に重視されているからです。コンバージョン最適化や、ユーザー動線をつくることがずっと重要視されます。
Karen : では中国とアメリカでは、どの点が共通でしょうか。コンテンツの種類でしょうか。
Ray : 驚いたのは、コンバージョンや、オーガニックな機会創出のためには、ブログや他のコンテンツを作るよりもフォーラム(Q&Aサイト)が重要だということです。
フォーラムはもちろんUSでも重要ですが、中国でははるかに巨大で数多くのサービスがあり、賢い企業は評判の良いフォーラムから情報を集め、ユーザーから何か言われれば対応しユーザーと関係を築こうとします。
USでも、過度に自分たちを売り込むのではなく、顧客とエンゲージする上でできる限り信頼されることが必要です。その点が共通しています。
中国市場に出るならばWeChat
Karen : 中国でパネルディスカッションに参加してみて、一番の気づきは何でしたか?USのマーケターが知っておいた方が良いことがあれば教えてください。
Ray : 中国にはWeChat(微信)があります。ご存知の方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、WeChatとはメッセージアプリケーションです。
USでいうと、WhatsAppやFacebookメッセンジャー、アジアだとLINE(USではほとんど知られていませんが、日本や他のアジアの国々ではよく使われているアプリです)、他に、Viberは楽天グループが運営していますね。
それら他のメッセージアプリとWeChatとの一番の大きな違いは、WeChatのユーザー数が桁違いであること。6〜7億人の人々が使っています。
次にやりとりできるメッセージの種類が多いということです。USだとWhatsAppとFacebookメッセンジャーは2大メッセージアプリで、SnapChatはビジュアル重視のように特化しています。WeChatは文字通り全てを行います。通常のメッセージ、画像シェアなどです。
似ている点では、FacebookやLINEが企業ページを設定できるように、WeChatでも設定できます。そのためWeChatで設定した企業ページは、他のサイトへの入り口となり、またユーザーは企業をフォローし、メールやメッセージなどを受け取ることができます。潜在顧客施策としてとても重要になります。
他にもたくさんのサービスがあります。中国でUberの競合サービスは巨大なユーザリストを持っており、WeChatを通じて直接タクシーが呼べます。支払いシステムもWeChatと直接連動しています。また、ほぼ全てのECや他のソーシャルメディアと結合もしています。
私は今までこんなに圧倒的なアプリケーション数、圧倒的なプラットフォームを見たことがなく、今まで知らなかったことにとても驚きました。
ウェブコンテンツのマネジメントの見通しという意味では、アプリケーションおよびバックエンドがWeChatに最適化されていくのは明らかでしょう。たとえば企業のウェブサイトにWeChatから直接飛んだ時、違和感がないよう、モバイル最適化している必要があるでしょう。
もう1点言うならば、WeChatというプラットフォームがあまりデータを公開していないため、マーケターは、競合がどれくらいWeChatで成功しているかを把握するのが難しいことです。
自社がどれくらい成功しているか把握するにしても、基本的なデータに限定されます。ユーザーターゲティングされたデータなどは持つことができず、文字通りユーザーにメッセージをばらまくしかありません。セグメント分けができないのです。
この状況が今後変わるかは分かりません。私としては、WeChatはターゲティングできることが彼らの強みだと思うのですが。
Karen : WeChatはtwitter、Facebook、LinkedIn、Pinterestなどのようなソーシャルメディアのプラットフォームが1つになっているイメージでしょうか。
Ray : はいともいいえとも言いづらいですが、一番似ているのはFacebookでしょう。Facebookのチャット機能がベースになっているような使われ方です。スタンプなどを使って感情を表現します。
電話はあまりしませんし、中国では我々がふだん使っている他のソーシャルメディアへのアクセスはできません。
Karen : 我々が使っているプラットフォームも今後WeChatのようにオールインワン機能になった方が良いと思いますか?
Ray : シリコンバレーの会社は、限定した機能で小さく始めます。オールインワンな仕組みを作るには規模が必要ですし、”全部やります”という戦略ストーリーではVCの出資を得づらいのが現状です。そこで、まずは1つをやってみて、そこから他に広げていくという方式を取ります。
例えば、Googleは検索やメールや他の機能で大成功していますが、Google+のように最初からソーシャルに向かっていたわけではありません。モバイル化は進んでいますが。
Facebookはソーシャルメディアやモバイルですばらしい実績をあげましたが、検索ではそうでもなく、今後も発展はしないでしょう。
中国では、状況が異なります。基本的に政府が海外の競合はすべて排除しますし、WeChatはスタートアップではなくテンセントという大企業から派生したサービスです。
おそらく今現在WeChatで収益をあげていないと思いますが、彼らは巨大な資本を持ち、他のビジネスで収益をあげているので問題ありません。自分の好きな事業をしていけるのです。
Karen : では、企業が中国に進出して最初に驚くことはなんだと思いますか?
Ray : 最初に驚くのは、おそらくウェブサイトの在り方でしょう。ふつうは、自社のウェブサイトに人を流入させようと考えますが、中国で、特にECでは、これは当てはまりません。
中国でECビジネスを行う場合、まずタオバオを使う必要があります。
タオバオは中国最大のECプラットフォームで、2段階あります。プライベートとフリーの2つです。
本当に無料なのかはわかりませんが、フリーはプライベートと比べてとても安く済みます。問題は、フリーはセキュリティもプライバシーも弱いということです。プライベートは本人確認がありセキュリティレベルも高いですがフリーよりずっと高いです。
トラフィックと顧客がほしければ、タオバオに支払って獲得する必要があります。そのため企業は、直接売上につながらなくても長期的にマーケットシェアをとるためにタオバオに支払い続けているのです。喜んでお金を出す企業はいくらでもいますし、ユニクロのタオバオ活用は成功事例のひとつです。
Karen : 既に中国に進出しているUS企業についてどう考えますか。それほど多く成功しているとは言えませんが、どうしてでしょうか。
Ray : 難しいですが、私が見聞きした限りだと、どれだけ現地に委任しているかでしょう。
アメリカ本社のことをよく分かっているアメリカ人のマネージャーが管理したとしてもうまくいきません。まず市場の理解が必要です。そして、現地のパートナーも必要。10〜20年くらい中国での実績があり、進出したい市場について精通していて、信頼のおけるパートナーです。
コンテンツという側面では、たとえばUSでコンテンツを作成し、その後海外の支社から各国へ公開するというやり方はうまくいきません。
中国や日本は全く異なります。現地に即したオリジナルの戦略・ブランディング・コンテンツを持つ必要があります。
Karen : 以前、どんなブランドが成功しているかについて話をしました。中国の人口は増えていて、ラグジュアリーブランドがたくさんあるとのことでしたが。
Ray : そうですね。その現象はアジアの至るところで起こっています。日本、韓国、台湾も同じです。
基本的に、よく知られている海外ブランドは良い結果が出ています。特にラグジュアリーブランドですね。アメリカ、ヨーロッパ、日本で知られているブランドは中国でも成功する可能性は高いです。
もしUSで知られていない企業で、グローバルでも知られていない企業であれば、中国で突然市場を開拓するということは難しいでしょう。
中国の人口は16億人で、ビジネス機会や製品が十分あります。ですので、海外企業だからという理由だけで誰も知らない企業と何かしたいとは思わないのです。ブランド力はとても重要な要素です。
アメリカと海外での「モバイル最適化」の違い
Karen : 少し話を戻して、モバイルとモバイル最適化について聞かせてください。中国企業はUS企業よりもモバイル最適化が進んでいると思いますか。
Ray : そうだと思います。全部がそうだと言えるわけではありませんが、消費者に近い企業はモバイルファーストで成長してきたため、進んでいると思います。
Karen : Googleはモバイルフレンドリーにアルゴリズムを変更しましたね。
多くのUS企業はモバイル化したと思うのですが、Rayさんはあまり重要ではないと考えていらっしゃるようですね。
USや他国ではモバイル化は進んでいるように思いますが、将来モバイルが重要であると理解するのは難しいのでしょうか?
Ray : USの企業にとっては難しいと思います。長い間デスクトップ型ウェブサイトが主流で、開発者やマネージャー、戦略を立てる人はその流儀で過ごしてきたわけです。モバイル化がくることは分かりきっていても、考えを大きく変えなければいけないので大変です。今後は、デスクトップよりもモバイルからのコンバージョン数が増えてくるので、徐々に理解できるようになるかもしれません。
モバイルからのコンバージョンはデスクトップほどありません。人々はコンピューターの前で、たとえばクレジットカードを見ながら購入するスタイルに慣れているからです。おそらくあと5〜10年は、少なくともアメリカに限れば、モバイル化の様子を見ていくスタンスを取るかもしれません。
Karen : 中国はすでにモバイルにシフトした考え方をしているということですよね?人々はデスクトップよりもモバイルに慣れていて、企業はモバイル化せざるを得ない。
Ray : そうですね。
Karen : とても驚きました。
Ray : モバイル最適化は大変です。特に大企業ではやることがたくさんあります。優秀な開発者があらゆることに気を配って進めていく必要があります。技術という側面では、”最適化”は魔法の言葉ではありません。巨額の投資が必要になることもあります。一朝一夕にできるものではないのです。
グローバルマーケティング=コンテンツのローカライズではない
Karen : まとめますが、中国に限らずグローバル市場を目指したければ、その市場の人々がどのような生活様式を持っているか、グローバル戦略に盛り込む必要があるのですね。
Ray : そうだと思います。どこかのコミュニティに入り、グローバルマーケット戦略に明るい人たちと会い、気に入ってもらえたら友人を紹介してもらうなどです。
やっていないのであれば、やっていないことがどういった影響を持つのかを知る必要があります。
国際的な提携について大事なことは考えることではなく、実際に行動することです。片手間にやるものではありません。これは長期的な戦略で、勝たなければいけないゲームだからです。
やるなら、中国で成功するために、お金のことは考えず、パートナーシップを築き、適任者を雇い、投資をする必要があります。
Karen : ヨーロッパの市場に進出する場合はどうでしょうか。
少なくとも、イギリスなどは、同じ言語です。文化的には多様ですが、言語が同じだけでは不十分でしょうか?
Ray : ヨーロッパは多様なマーケットです。またヨーロッパは、国によってユーザー行動がとても異なっています。たとえばEUですと、あたかも1つの地域のように見えますが、実はバラバラです。市場、言語、生活水準(予算)、生活習慣など。オンラインの購買行動もバラバラです。ヨーロッパに進出するにもハードルがあると思います。
Karen : どうやら、海外でパートナーシップを持つには、彼らの文化や購買行動を各国ごとに理解することのようですね。
Ray : 全くもってそうですね。
Karen : そろそろ締めくくろうと思いますが、最後に追加で言っておくことはありますか?
Ray : 話したいことは話せたと思います。
来年ad:tech Chinaに出たい方はぜひ応援したいと思います。人々は親切ですし、中国以外の国からの人々もたくさんいましたので、アメリカから一人だけではないかと心配する必要もありません。
8,000人くらいの方が参加した大きなイベントでしたが、ネットワーキングパーティなど、人々と知り合う機会があります。良い経験をしましたし、おそらく来年も出ると思います。
ad:tech Chinaは、戦略的に中国へ出て行く方の最初の一歩としておすすめします。