今回は、転職求人サイトDODA(デューダ)を運営するインテリジェンス社の森本氏にオウンドメディアの運用についてインタビューさせていただきました。森本氏は、DODAが運営する20代ビジネスパーソン向けメディア「キャリアコンパス」を担当されています。今回は、「キャリアコンパス」というオウンドメディアの運用全般について、詳しくインタビューしたいと思います。
株式会社インテリジェンス キャリアディビジョン マーケティング企画統括部 広告宣伝グループ 森本氏
20代とのタッチポイントを作る
「
キャリアコンパス」は、転職支援を行うDODAが、まだ転職を考えていない20代のビジネスパーソンとのタッチポイントを作るために、2012年に生まれた立ち上げたオウンドメディアです。コンテンツを使って、20代のビジネスパーソンとの長期的なタッチポイントを作ることがキャリアコンパスの主な目的です。
コンテンツ設計
「キャリアコンパスのコンテンツは、DODA内にある転職活動者向けのコンテンツと比べ、転職をまだ具体的に考えていない「転職潜在層」向けのコンテンツが中心です。キャリアコンパスでは、ターゲットを9つのカテゴリに分類し、コンテンツを企画しています。まず、転職意欲の高さ~低さに応じて3グループに分類、さらに職種や年齢層で特定のユーザー属性に応じて3グループに分類し、それらを掛け合わせた合計9つのターゲット分類に応じたコンテンツカテゴリを作っています」
コンテンツを9つのターゲット別に分類
「例えば、年収関連のデータや企業ランキングなどは、転職意欲が高いユーザーが興味をもちやすいコンテンツです。
例)
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一方、働き方やビジネストレンドなどで構成されるニュース系のコンテンツや、イキペディアという街頭インタビューコンテンツは、転職意欲がない方でも興味を持ちやすいコンテンツです。
例)
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「キャリアコンパスは、基本的に転職潜在層向けのコンテンツが中心ですが、その中でも、ターゲットの属性や転職意欲に応じたコンテンツの作り分けを行っています。また、トラフィックの新規獲得に適したコンテンツ、再訪を促すのに適したコンテンツ、コンバージョンの獲得に適したコンテンツなど、それぞれに特徴が異なります。複数のコンテンツを掛け合わせて閲覧いただくことで、また違った効果を発揮することも分かっています。」
KPIと集客方法
「キャリアコンパス」では、どのような指標で成果を管理しているのでしょうか?
「20代のビジネスパーソンとのタッチポイントを作るということを目的としているため、PVやUUを最も重視しています。その上で、キャリアコンパス経由でのDODAの会員登録数などのコンバージョン指標は、補足的な指標として見るようにしています。会員登録への寄与が全くないのは問題ですが、キャリアコンパスの役割からして、PVやUUなどの新規ユーザーとのタッチポイントを計る指標の方を重視するようにしています。」
トラフィック重視ということであれば、集客方法が重要になります。
「SEOやソーシャル流入以外に、キュレーションメディア、ネイティブアド、コンテンツアライアンスやリスティング広告などを使いながら集客しています。立ち上げ当初は、キュレーションメディアや広告からの集客の割合が高かったのですが、今は、コンテンツが充実してくるにつれ、SEOによる集客が増えてきており、広告を使った集客依存度を減らすことができています。1UUあたりの獲得コストもサイト開始時に比べ、3分の1程度に削減できています。SEOによる集客として有効なコンテンツは、ニュースやランキングなどのデータ系のコンテンツが中心です。ニュース系やライトなデータ系(※)のコンテンツは、転職潜在層向けのトラフィックを重視したコンテンツカテゴリとして位置付けていますが、その役割をしっかり果たしてくれています。」
※ 例)
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コンテンツの作り方
SEOの実績が出ているということですが、コンテンツはどのように作っているのでしょうか?
「サイト全体で、毎月50本程度の記事を掲載していますが、SEOでの集客効果を目的に作っている記事は全体の半分程度です。記事の制作は、最初に、検索クエリー数を考慮してキャリアコンパスの読者が検索するであろうキーワードのリストを作成し、そのリストをもとに編集会社と企画を検討するようにしています。その企画案をベースに、ソーシャルメディア、キュレーションメディアを意識した、企画のネタを重視で作るか、SEOを意識した、キーワードを重視で作るかを都度判断し、ライティングの方針を決めています。また、ライティングを進める際に、パブリックDMPのデータを活用し、そのキーワードで検索しているユーザーの傾向を分析することがあります。そうしたデータを活用することで、ユーザー像がより明確になり、記事内容のクオリティを上げることにつながっています。」
パブリックDMPのデータを広告のターゲティングだけではなく、コンテンツ作りにも活用する方法は、共起語や関連ワードでは見えづらい、ユーザー像を明確にするための良い方法だと思いました。
コンテンツの作り方について話す森本氏
「SEOの管理方法として、上述したコンテンツの9分類に対して、キーワードを割り振っています。そして、GinzaMetrics上で9分類に対応するキーワードグループを作成し、キーワードグループレベルで、順位の状況を把握しています。その時々の状況により、優先するキーワードグループを決め、順位目標に達していないキーワードに対して、コンテンツのチューニングや強化を行っていきます。また、そのチューニングや強化の方法を、できるだけシンプル化・パターン化しようとしています。コンテンツを修正するときのチェック項目を作成し、それにもとづいてオペレーショナルに作業ができるようにしていきます。このチューニング作業を体系化することで、中長期的には外部のパートナーに協力いただきながら、PDCAサイクル自体をスケールすることができると考えています。その際には、GinzaMetricsを外部のパートナーとと共同活用していくのもよいかもしれません。ビッグワードとテールワード、キャリアコンパスが得意なワードとそうでないワードなど、キーワードごとに対応方法が変わってくると思いますが、まずはシンプルな方針で運用を始めてみて、徐々に精度を高めていければと考えています。SEO集客に関しては、前年比約160%ほどトラフィックが増えてきています。今後はGinzaMetricsを活用して運用のレベルを高め、さらに集客力を向上させていきたいですね。」
森本氏と取り組みをさせて頂く中で、SEOのオペレーションについて相談いただくこともありますが、最終的な絵を描き、そこに向けて運用を作っていこうとされているのを感じます。
キーワードグループで優先度を付け、目標順位以下のワードをチューニング(画像はデモ画面でありインテリジェンス社の実際の画面ではありません)
検索エンジン以外のプラットフォームの活用状況はどうなのでしょうか?
「ソーシャルメディアの活用については、SEOのように明確な勝ちパターンを構築できているわけではないですが、いくつかヒット企画も出てきています。また、特定のキュレーションメディアと親和性が高いコンテンツの作り方も、仮説検証を繰り返すことで、明確になってきています。やはりタイトルの付け方なども大事ですね。あるアメリカの会社の事例で、各ソーシャルメディアに専任の担当をつけていると聞いたことがありますが、各メディアにコンテンツを適応させていくことは重要だと感じています。私は、「“未来を変える”プロジェクト」という、「キャリアコンパス」とは別のDODAが運営するオウンドメディアにも関わっています。こちらのサイトは、SEOよりもソーシャルを強く意識した作りになっています。こちらでもGinzaMetricsを活用していますが、SEOというよりはソーシャルシグナルの計測/分析を中心に行っています。「キャリアコンパス」、「“未来を変える”プロジェクト」ともに、GinzaMetricsを活用してソーシャルシグナルの分析を実施し、ソーシャルメディアやキュレーションメディアでの勝ちパターンを見つけていきたいと考えています。その他、ネイティブ広告やコンテンツアライアンスにも取り組んでいます。コンバージョンの成果だけで見てしまうと、費用対効果が見込みにくい取り組みではありますが、リマーケティングなど、他の広告と組み合わせることにより、トータルの費用対効果を高めるようなことができないかを模索中です。」
コンテンツ別にソーシャルメディアでの拡散状況を分析(画像はデモ画面でありインテリジェンス社の実際の画面ではありません)
今後の展望
「運用体制をより安定・強化していくことを検討しています。キャリアコンパス内には、オペレーショナルな作業で対応できるコンテンツもあれば、高度な編集スキルが必要な企画コンテンツもあります。それぞれのコンテンツにより適したパートナーやスキームで運用することで、質を落とさずに拡大していけると考えています。また、長期的には、DMPなどで社内外のデータを活用して、ユーザー像を明確にし、より適切なコミュニケーションプランを各チャネル/コンテンツを活用して展開していきたいと思ってます。」
まとめ
インテリジェンス社のオウンドメディア運用のポイントをまとめます。
- オウンドメディアの役割、コンテンツの設計、KPIが明確なため、幅広い取り組みにもかかわらず施策がブレない。
- 長期的に運用することでSEO集客が前年比160%伸長し、集客単価が約3年間で3分の1にまで下がっている。
- SEOの改善業務はスケールできるようなオペレーションを構築している。
- コンテンツ作りは社内外のパートナーと連携して行っている。
- SEO、ソーシャル、キュレーションメディアなど各プラットフォーム別にコンテンツと運用方法の最適化を進めている。