ウェブサイト運営において、ロングテールSEOは重要な位置づけを占め、特に大規模サイトにおいてはロングテールSEOが、SEO効果の成否を分けるポイントと言っても過言ではありません。このブログ記事では、特に大規模サイトにおけるロングテールSEO対策の方法をまとめます。
ロングテールSEOはどのくらい重要なのか?
大規模サイトにおいて、ロングテールワードのSEOは非常に重要です。その重要さを説明するために、
過去Wordtracker社が行った調査を紹介します。大規模サイトの例ではありませんが、ロングテールSEOの重要性がよくわかります。この調査は、あるサイトの1ヶ月の自然検索流入の、キーワード数とサイト流入数をセグメント別に見たものです。そのサイトの自然検索の流入数は約95000件で、検索ワードの数は約45000ワードでした。トップ10のキーワード(いわゆるビッグワード/ヘッドのワード)の流入数は9400件です。全体のたった0.02%のキーワードで、検索流入の10%を稼ぎます。
一方ロングテールワードを見てみると、1ワードあたり流入数が2件以上のキーワードは約8000ワード(45000件の20%未満)で、流入数がたった1件しかないキーワードが80%超を占めます。この80%超のキーワード数で、自然検索流入数の約40%を占めています。流入数だけを見ると、ヘッドのワード(トップ10ワード)が流入数全体の10%を占め、流入数1件の超テールワードの合計が全体の40%を占めます。10%と40%、流入ボリュームで見て、テールワードの重要性が分かると思います。
ロングテールとスモールワードを分けて考える
ロングテールとスモールワードは混同されがちですが、大規模サイトの場合、ロングテールとスモールワードを別として考えることで対策が打ちやすくなります。ビッグワード〜スモールワードとロングテールのイメージは下記の図の通りです。
ビッグワード〜スモールワードとロングテールの概念図
スモールワードとロングテールを別として考える理由は、大規模サイトでは、スモールワードとロングテールでは、SEO対策の打ち手が異なるためです。ビッグワード、ミドルワード、スモールワードは、対象ワードを明確に狙って施策を行います。一方、ロングテールは、どのワードを具体的に狙うかは明確にしないでSEO対策を行います。以下でビッグワード〜スモールワードと、ロングテールのSEO対策をそれぞれ説明します。
ビッグワード〜スモールワードのSEO対策
まずビッグワード〜スモールワードSEOの方法を下記の5つのステップで説明します。
- キーワードの洗い出し
- 対策キーワードの選定
- 対応ページの把握
- サイト構造系施策、コンテンツ系施策の実施
- 効果検証
その後、それをベースにロングテールSEOの方法を説明します。
1.キーワードの洗い出し
ビッグワード〜スモールワールドはキーワードを狙ってSEO対策を行いますので、まずキーワードの洗い出しを行います。洗い出しが不十分な場合、注力するべきキーワードを見落とすことになりますので、意図的に広く洗い出します。下記のようなデータや情報に基づいて洗い出します。
- アクセス解析/SearchConsoleデータ (自然検索のサイト流入実績のあるワード)
- PPC広告
- 自社、競合のカテゴリ名、サブカテゴリ名、タグ名
- 事業上重要なキーワード
- 担当者の経験、直感、ユーザーが欲する情報
- 顧客や商品に関して社内に蓄積し情報
- Q&Aサイトなど他サイトの情報
- キーワードプランナーなどのツールで抽出したキーワード
キーワードの洗い出しで洗い出すのはキーワードだけではありません。キーワードの裏側にある検索ユーザーのニーズも洗い出します。検索ユーザーは何が知りたくて検索しているのかも整理していきます。
2.対策キーワードの選定
大量に洗いだしたキーワードの全てを対策することはできませんので、下記のような基準で優先度を付けて絞ります。
- 事業上の判断:自社で取り扱う商品、自社の強みが活きるなど
- 数値情報:検索ボリューム、順位、流入数、CVなど
- SEO施策の工数:開発が必要か、ページはあるかなど
- 競合サイトの強さ:上位ページに大規模サイトが多いかなど
- SEO担当者の判断:過去の経験上上手くいった施策など
- 上位表示した時にユニバーサル検索やリスティング広告に邪魔されにくいキーワード
数値情報に関しては、Yahoo!のSSL化によりキーワード別の流入数、CV数などは分かりづらくなりましたが(not provided)、順位など、まだ取得できるデータはありますので、有効に活用しましょう。
数百~数千ワードくらいにまでキーワードを絞り込むと、次以降のステップは実行可能だろうと思います。
自社/競合順位、CTRなどキーワード関連指標が一元的に把握できる
3.対応ページの把握
対策するキーワードが決まれば、選定したキーワードでランクインさせたいキーワードを整理します。全部のキーワードに対して整理する必要はないかもしれませんが、主要カテゴリのページなど、サイト構造上、重要なページについては整理しておいたほうが良いでしょう。そして、実際に狙ったページがランクインしているかも把握します。数百〜数千ワードに対するランディングページを探すのは、工数のかかる作業ですが、Ginzametricsは、これを自動的に行います。
何千ものキーワードに対するランディングページを自動で収集
狙っているページでランクインできているかどうかのチェックもPLPレポートを使えば簡単にチェックすることができます。
PLPレポートでランクインページのマッチ状況も簡単に把握できる
4.サイト構造系施策、コンテンツ系施策の実施
課題に合わせて、サイト構造系施策とコンテンツ系施策を実施します。ランクインしているページが適切でないことが多い場合は、サイト構造の問題の可能性が考えられます。一方、適切なページでランクインできているにも関わらず順位が悪い場合は、コンテンツに問題がある可能性を疑います。
また、titleタグやhタグの使い方など、SEOのお作法からズレたページを修正する場合は、割りと機械的な作業になりますが、Ginzametricsの場合、ページ単位でページ構造のチェックを自動で行いますので、SEOに詳しくない方でも、何をどう修正すべきかが分かります。当該ページがどういったキーワードでランキングしているかも一覧で確認することができますので、ターゲットにしているワード全体を把握した上での最適化施策を行う事ができます。
title、h1、h2、descriptionなどのSEO施策をアドバイス
ランクインしているワード全体を把握しながらページの最適化ができる
ページ構造のチェック機能の使い方は下記の記事でも紹介しています。
5.キーワード全体の順位改善を検証
ビッグワード〜スモールワードのSEO対策の効果検証は、カテゴリなどでグルーピングしたキーワードグループ別の平均順位やPotential Traffic(流入予測数)を確認することで把握できます。Ginzametricsの場合、積み重ねグラフや自社/競合の平均順位がキーワードグループ別に簡単に把握できます。平均順位やPotential Traffic(流入予測数)の変動をキーワードグループ別にチェックし、SEO対策の効果を可視化してくれます。
キーワードグループ別に順位の改善状況を確認
ロングテールのSEO対策
さて、ここからが、ロングテールSEOについての説明です。ロングテールSEOは、1ヶ月に1回流入が獲得できるかどうか分からないぐらい検索回数の少ないワードを大量に束ねて大きなトラフィックを獲得する施策です。ロングテールSEOでトラフィックに影響するレベルで成果を出すためには、対象ロングテールワードの数として、小規模なサイトでも数百〜数千ワードにはなります。大規模サイトとなると数万ワードは余裕で超えるでしょう。そんな大量のワードを1つ1つ選定して対策を打つことは現実的ではありません。
したがって、大規模サイトの場合、ビッグワード〜スモールワードとロングテールでは、SEO対策の方法を変える必要があります。
ロングテールSEOは検索ニーズを狙う
ビッグワード〜スモールワードは、キーワードを明確に狙ってSEO対策を行いますが、ロングテールSEOは、個別のワードは狙わずユーザーニーズを狙って対策することが有効です。ロングテールのキーワードは、非常に多様ですが、検索キーワードの背景にある、検索ニーズは、ある程度の粒度で分類することができます。そのニーズが基点となり、想像もしないような多様なキーワード(ロングテールワード)が生まれます。したがって、ロングテールSEOで大事な観点は、ロングテールのキーワードを1個1個追うのではなく、その背景にあるニーズをしっかり追うということです。
Googleはハミングバードなど、キーワードではなく、検索意図(インテント)とコンテンツのマッチングアルゴリズムを進化させてきました。結果、キーワードはマッチしていなくても検索意図(インテント)にマッチしていれば検索上位に表示されるケースが出てくるようになりましたので、なおさらこの考え方が有効だと思います。
ロングテールSEOの施策例
キーワードではなく、ニーズを狙ったロングテール対策の例としては下記のようなものがあります。
1,ユーザーニーズにもとづいたページテンプレート設計
商品/サービスごとにユーザーが検討上、必要とする検討項目は異なります。ユーザーのニーズにマッチした検討項目をテンプレートとすることで、自然とニーズにマッチしたページ/情報が蓄積されていきます。もちろん、項目内の情報も充実させられるようデータ登録にルールを設けることも有効な仕組みになります。例えば、価格.comは対象商品に合わせて一覧ページの項目が選定されています。
PC検討者に最適化された価格.comのノートPCの商品一覧画面
出典:
価格.com:ノートPCの商品一覧画面
液晶テレビ検討者に最適化された価格.comの液晶テレビの商品一覧画面
出典:
価格.com:液晶テレビの商品一覧画面
2,レビューによるユーザー視点の情報蓄積
モノを購入するときなどに、購入経験者の意見や第三者の意見を参考にしたいというニーズは強いと思います。EC等の場合、商品やサービスのレビューには、スペック情報には表れない利用者/購入者からの各商品に対する良かった点、悪かった点が自然に蓄積していきます。これらのレビュー情報が、検討中の検索ユーザーのニーズとマッチし、ロングテールSEO対策として有効に機能します。レビューを集めることは簡単ではありませんが、レビューの設置や投稿増加施策は、検討する価値のある施策です。
多くのレビューが集まるAmazonの商品ページ
出典:
Amazon:商品詳細ページ
もちろん、下記のようにレビューはECサイト以外でも有効です。
記事内にレビュー情報を含めることで、オリジナル性を高め/流入キーワードバリエーションを広げる
出典:
みんなのウェディング:みんなの結婚塾
3,専門家による専門知識の蓄積
内容が専門的な場合は、素人の経験談などよりも専門家の意見を求める人が多くなるでしょう。このような場合、専門家の意見をコンテンツに取り込むことで、有効なロングテールSEO対策になります。医師、弁護士、会計士など以外にも、◯◯アドバイザーや◯◯プランナーなど、ニッチながらも、その道に精通した専門家がいる分野があります。また、社内にも現場情報に精通したメンバーや、研究開発部門などにナレッジが蓄積していることもあるでしょう。専門的なテーマのウェブサイトを運営している場合は、こうした専門家や詳しい人の知識やノウハウ情報が集められないか検討してみると良いでしょう。
法律関係の質問に対しての弁護士の専門的な回答が得られるQAコンテンツ。専門用語が自然に入るコンテンツ。
出典:
弁護士ドットコム:弁護士ドットコムライフ
ロングテールSEOについての3つの施策例を紹介しました。大規模サイトのロングテールSEOで基本的な考え方は、個別のキーワードではなく、いくつかに分類したユーザーニーズや検索意図(インテント)に対応したコンテンツが自動的に組み込まれていく仕組みを作ることです。ビッグワード〜スモールワードのSEO対策との違いを理解して取り組みましょう。
ロングテールSEOの効果検証
ロングテールSEOの効果検証は、対象ページ全体の検索流入数が良いと思います。また、ロングテールの改善は、対象ページでメインで狙っているビッグワード〜スモールワードの順位改善にもつながりますので、キーワードグループ別の平均順位やPotential Traffic(流入予測数)もチェックしておきましょう。
ロングテールSEO対策のまとめ
冒頭述べたように大規模サイトにとってロングテールSEOは非常に重要です。ロングテールはスモールワードと混同されることがありますが、ビッグワード〜スモールワードのSEO対策と、ロングテールのSEO対策は異なります。その違いを意識して、ロングテールSEO対策の方法をまとめました。重要な点は下記になります。
- 大規模サイトの流入増加施策においてロングテールSEOは非常に重要。
- 大規模サイトの場合、ビッグワード〜スモールワードのSEO対策とロングテールのSEO対策は別の施策として取り組むべき。
- ビッグワード〜スモールワードはキーワードを狙ったSEO対策(サイト構造系施策、コンテンツ系施策)を行う
- ビッグワード〜スモールワードSEOの効果検証はキーワードグループ別の平均順位やPotential Traffic(流入予測数)を見る。
- ロングテールSEOは、ユーザーニーズを狙って、ニーズにマッチしたコンテンツが自動的に組み込まれる仕掛けを実装する
- ロングテールSEOの効果検証は、対策ページ全体の検索流入数や対象ページのメインキーワードの平均順位やPotential Traffic(流入予測数)をチェックする。
参考にしていただけると幸いです。