DemandSphere の 2026 SEO予測

2026年、検索はもはや「キーワードを入力してリンクをたどる」ものではありません。私たちは今、検索体験が「エージェント型」に移行する可能性のある、転換点に立っているのです。本記事では、現状を整理し、2026年を見据えた論点をご紹介したいと思います。

「検索」が指すものの多様化

DemandSphere は「すべての検索は AI 検索である」と定義しています。ずっと以前から、検索エンジンには AI が随所に組み込まれ、もはやそのコアになっているからです。では、新しい検索と旧来の検索は何が違うのか。以下の 3つに分けられます。

SERP(検索結果画面):

従来の検索を指します。しかし AI オーバービューや AI モードに代表される AI 的な新機能が、新たな SERP を形成しています。結果の羅列を眺めるだけの検索から、よりインタラクティブなアンサーエンジンへと進化しています。

生成 AI やチャット検索:

ChatGPT や Perplexity での会話を通じた検索が普及しています。検索ではないクエリも多く含まれ、ユーザーは会話を通じて問題を解決します。会話そのものがユーザーのニーズを満たすこともあります。

エージェント型検索:

情報を探すだけでなく、予約や購入といった「タスク実行」までを担う検索が登場しつつあります。のちほど触れさせていただきます。

上記はすべて AI 検索です。しかし、それぞれに「体験」が異なります。検索の話をするときに、どれの話をしているのか確認する必要があります。そうでないと、議論が噛み合わなくなってきています。

ゼロクリックを再考する

ゼロクリックが増えると Webサイトへの流入がなくなるという懸念がありますが、誤解があります。ゼロクリックとは、SERP(検索結果画面)内で検索が完結する場面が増えているということです。これは、アンサーボックス等の旧来の SERP から、しばしば見られる現象です。

LLMO や GEO は、新しいスニペットに最適化しようという発想であり、古い SEO のアプローチとあまり変わらないのです。

AI オーバービューや AI モードの登場以降も、クリックも CTR も成長し続けているクライアントはたくさんいます。重要なのは、多用な SERP において自社がどのように表現されているか。そしてそのタッチポイントから、どのようにビジネスに繋げるか。2025年には、ゼロクリックについて改めて考えさせられました。

SEO への期待の高まり

また、SEO データはもはやマーケターだけのものではないということも象徴的な出来事でした。昨年は非 SEO 担当者からの問い合わせが急増しました。

検索はブランドチャネルであり、どのようにユーザーと接点を持つのかを、多くのマーケターが気にしているのです。AI はブラックボックスですが、市場のリアルタイムの反応が表れています。この点に注目するマーケターが増えており、米国でも日本でも、非 SEO マーケターが検索について語っています。

Mike King は「SEOはインターネット全体を支える、過小評価された労働力だ」とたびたび言及しています。これは本当にその通りだと思いますし、AI ブームにおいて、検索がいかに重要か再認識されつつある只中にいると感じます。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、検索の産業が 2030年までに 25兆円以上(1,710億ドル)になると報じています。

エージェント型検索の現実と限界

AI エージェントが買い物をしてくれる未来は、2026年に大きな試練を迎えるでしょう。現在の SERP 機能には、すでに旅行比較やレシピ表示など、様々なものがあります。ここから将来のエージェント型検索が見えてきます。

例えば、SERP のショッピング機能は、実際に使ったことがある人も多いでしょう。これを活用すれば、エージェント検索は実現できるかもしれません。しかし、B2Bコマースの SERP 機能は見たことがありません。見積書発行機能や、ERP連携などが検索に盛り込まれるのは想像しづらいですね。実際に、OpenAI は B2C コマースからエージェント検索を普及させるようです。

しかしながら、今のところ自分でエージェント検索を使って購買をしている人は、ほぼゼロです。エージェント検索のイメージは、Slack に「ロンドンに出張するから航空券とホテルを手配して」と打つだけで、n8n が動き出すような仕組みです。技術的にはほとんど可能でありながら、わざわざこれを作り、運用している人はいません。技術的なハードルも、人間と AI の関係性も、まだまだ課題が山積みなのでしょう。

非常に興味深い分野ではありますが、まだまだユースケースが足りないのが現状です。

AI 検索の制約と課題

AI は魔法のように見えますが、2026年現在、その成長は物理的・社会的な壁に直面しています。

まず、物理的な問題が挙げられます。AI の性能を決めるのは、GPU だけではありません。HBM(高帯域幅メモリ)の不足が、目下の重要問題となっています。HBM は GPU に直結されるため、あとから増設できないという制約があります。この問題の解決策として、CXL(Compute Express Link)という技術が注目を集めています。メモリをプール化し、HBM への圧力を下げつつ大規模なデータ分析を実現するものです。

CXL は Intel によって開発され、2019年にGoogle や Microsoft らとともにコンソーシアムが立ち上げられました。2022年には NVidia や AMD など、テック界のほとんどの主要プレーヤーが参加しています。CXL は AI だけでなくデータエンジニアリングの世界でも興味深い可能性があり、Postgres をはじめとするデータベース管理システムの性能や柔軟性を上げる技術として注目されています。

次に、社会的な問題について考えてみましょう。2025年には AI スロップ(低品質な AI ゴミ)が社会的問題になりました。人々はネットの情報を疑うようになり、手作りのものや本物の体験に回帰していく兆しが見えています。また、思考を AI に委ねすぎて社会全体の知的能力が低下する懸念も出ています。私自身、紙とペンの大切さを感じる場面が増えました。

さらに、AI のために消費される膨大な電力や水資源は、世界的環境問題にもつながります。2026年は、政治家などを中心として、AI に対する社会的な合意形成がはかられるタイミングとなりそうです。技術だけでなく、社会の変化にも目を配りましょう。

2026年の DemandSphere

2025年に乱立した LLM トラッキングツールは、生き残りをかけたフェーズに突入しています。多くの生成 AI サービスや検索エンジンはクロールされにくい実装を強化する傾向にあり、いくつかのベンダーはデータ取得を諦めました。また、1,2年のモニタリングを経て、ユーザーもその用途について考え直すタイミングとなりました。

DemandSphere は業界では珍しく上位 50位までのトラッキングをデフォルトとし、AI モニタリングにおいても高い安定性を証明することができました。欧米を中心に、LLM トラッキングツールから我々に移行するケースが増えています。よく耳にするのは、SEO と LLM のモニタリングはどちらも同じプラットフォームで管理したいという意見です。

私たちは、SERP、生成AI、エージェント検索のすべてに対して準備をしています。ぜひみなさまとともに、素晴らしいプロダクトまたはサービスを作っていきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。2026年が、健やかで実りある一年になることを心から願っています。