AI検索をめぐる問題と当社のアプローチ

2025年上半期も、史上最も忙しいシーズンとなりました。AI による市場と技術の変化は凄まじいものです。

当社は今年、10以上の大規模な新モジュールや機能をリリースしました。今回はこの中から、重要なものをご紹介するとともに、市場の変化や AI についての我々の見解をご説明します。

3月末、当社は米国にて ChatGPT や Perplexity を含む、生成 AI 検索のモニタリング機能をベータ版としてリリースしました。いくつかの研究に活用いただき、セミナーなどで調査結果を報告させていただきました。ついにこの機能を一般公開します。日本では DemandMetrics for AI サーチ という名称で提供いたします。価格は対象の検索プラットフォームや地域によって異なりますので、担当者へご連絡ください。私たちはお客様との対話を通じて独自のソリューションを目指していきます。

AI 検索による変化

Google はいまだに、トラフィックのほとんどを占めています。ただし、LLM(大規模言語モデル)の登場により、UX(ユーザー体験)や AX(エージェント体験)の両面でまったく新しい利用パターンが生まれていることも無視できません。

しかし Googleを「従来型の検索」、ChatGPT などを「AI 検索」と分けて考えることに、あまり意味があるように思えません。「すべての検索は AI 検索である」と捉えるのが当社の見解です。そもそも、Google I/O でも明言されていましたが、AI は以前から Google 検索に深く組み込まれています。すでに多くのマーケターが「SEO」として取り組んでいたことの多くは、AI への対策なのです。

とはいえ、新しい AI 検索というインターフェースが登場したことで、多くのマーケターが検索順位よりも AI に引用されることに注目するようになりました。本質的なマーケティングに立ち返るきっかけになるという点で、よい変化といえるでしょう。そして AI 検索における関心事は、LLM 上におけるブランドの可視性(ビジビリティ)に移り変わりつつあります。ここで注意すべき点について、ご説明したいと思います。

AI 検索のおおまかな仕組み

大前提として、基盤言語モデルとRAG(検索拡張生成)の違いを理解しておく必要があるでしょう。モニタリングの観点では、基盤モデルそのものを監視することはあまり意味がないでしょう。というのも、こうした言語モデルは公開された時点ですでに情報が古くなっていることが多いからです。メジャーな LLM でさえ、日本の総理大臣が岸田文雄さんの時代のままであることが多々あります。

それでも最新の情報を LLM が回答できるのは、RAG が使われているからです。ここでは、RAG は検索インデックスとご理解いただいてもいいでしょう。LLM は既知の情報から推論しつつ、検索インデックスを活用しているのです。

LLM がググる

ChatGPT や Perplexity といった新興プラットフォームは、大規模な検索インデックスをまだ持っていません。そもそも、何十年にもわたって莫大な投資をされてきたインフラは、世界のどこを探してもありません。Bing でさえ、これだけ長年やってきていても、Google との差は依然として縮まりそうにありません。

ChatGPT、Perplexity、Claude などの LLM は、Google や Bing のインデックスに依存していると考えられます。

OpenAI と Microsoft は強力な提携関係ににあることは周知の通りです。そして多くの人が ChatGPT の検索データは Bing から取得されていると考えがちです。しかし、私たちのリサーチとデータは、それとは異なる結果を示しました。ぜひ以下のスライドをご覧ください。

調査結果によると、ChatGPT が取得している検索結果の 50% 以上は Google を参照しているとみられ、Bing は約 14% に過ぎません。Google のインデックスは、LLM にとって重要な情報源なのです。AI 検索と呼ばれるものの正体は、以下のようなフローで回答が生成されています。

いずれにしても、AI 検索エンジンの生成結果のほとんどは、Google または Bing の検索インデックスに依存していることは明らかです。LLM にしか提示できない検索結果というものは、今のところ見つかっていないからです。

また同時に、AI 検索が参照している検索インデックスはパーソナライズが行われていないことも意味しています。だからこそ、たとえ検索が個別に最適化される時代であっても、通常の検索インデックスの構造や表示内容を把握することに価値があるのです。

Google の場合、AI モードでも AI オーバービュー(AI による概要)でも、形はどうあれ未加工の検索インデックス(つまり Google 自身のインデックス)が常に関与していると思われます。我々のリサーチでは、ChatGPT ですら Google を参照しているのですから、当然のことかもしれません。

我々の新機能では、AI 検索の結果と通常の検索エンジンのランクのオーバーラップを確認することもできるのでぜひご覧ください。

生成 AI 検索モニタリング

私たちは、同じクエリを用いて ChatGPT や Perplexity、さらに Google と Bing 上での検索結果を取得し、回答内容および引用元におけるブランドの可視性を分析しています。

テスターから高く評価いただいた機能として、引用回数や引用率(Share of Voice)のトラッキングがあります。自社・競合・その他のサイトが AI 検索でどのような存在感なのか、ひと目でわかる機能です。

トレンドチャートもご利用いただけますので、変化をご覧いただくことができます。

これらのデータを見ても、多くの人はどんなアクションをとるべきかわからないでしょう。しかし、先ほど述べたことに関連するのですが、Google または Bing との関連性が確認できれば、通常の「検索エンジン最適化」を実施することでこれらは改善できるのです。

プロンプトを考える

AI 検索をモニタリングするうえでの課題のひとつは、プロンプトの検討です。私たちはすでに1年も前から AI オーバービューの調査を実施し、今までのキーワードセットがそのまま流用できないことに悩まされました。AI への質問、すなわちプロンプトを考えなければならないからです。例えば、ビッグワードとよばれる検索語句のほとんどは、ただの単語です。単語のまま AI に質問することはナンセンスでしょう。

仮に AI に質問すべきプロンプトを思いついたとしても、それの良し悪しが判断できません。Google Search Console がなければ、キーワードプランナーもなく、検索ボリュームもないからです。

私たちは、さまざまなソースからデータを収集するクエリマイニングの試行錯誤を重ね、サジェスト・エクスプローラーという機能をリリースしました。これにより、自社のモニタリングデータに関連するプロンプトを、迅速に活用いただけます。

AI 時代には AI で立ち向かう

ベクトル埋め込み(vector embeddings)トランスフォーマー(transformer)は、これまでの AI 技術における最も革新的な2つの進化であり、私たちはまだその可能性の表面をなぞったに過ぎないと感じています。この現実を踏まえ、当社ではベクトル埋め込みをソリューションの中核的な要素とすることを決めていました。

我々のシステムの複雑さや規模を考えると、これは口で言うほど簡単ではなく、多くの要素が絡んできます。例えば、ベクトル検索を DemandMetrics に組み込んでもほとんど有効に活用することができません。それでも、常に最新技術を取り込み、我々のソリューションを進化させてきました。

今回は最新機能に Googleのネイティブな埋め込みモデル(Vertex AI)を活用し、AIオーバービューに表示されるコンテンツと、その要約をそれぞれベクトル化し、コサイン類似度を計算しています。

AI をめぐって様々な議論が続いていますが、AI を理解し使いこなすことが最もシンプルな答えの一つだと思います。

当社ではこうした技術をプラットフォーム全体に広く展開するための取り組みを本格的に進めています。すでにいくつかの優れた新機能が開発中であり、今後さらに詳しくご紹介していく予定ですので、ぜひご期待ください。

今後について

ご興味をお持ちいただけた方はぜひお問い合わせください。また、10月には東京で FOUND Conference という大きなカンファレンスを実施しますので、お会いできることを楽しみにしています。イベントページにて、ライトニングトークのスピーカーを募集しているようなので、ぜひご応募ください。