Google アップデート記録を無償公開

Google が検索のランキングシステムに AI を組み込み始めたのは、2013 年のこと。10 年以上昔、Hummingbird がリリースされたときです。「AI 検索は 2023 年の ChatGPT から始まった」という言説もありますが、SEO に携わり続けてきた私たちの認識とは、ズレがあるようです。

このズレがここまで見えにくかった理由は、シンプルです。アルゴリズムアップデートと AI のイノベーションが、別々の場所に、別々の粒度で記録されてきたから。両者を一本の時間軸に並べて見られる場所が、これまでどこにも存在しなかったのです。

ですので、私たちは自社で開発することにしました。2000 年から今日までの 170 件以上のエントリを、1 枚のタイムラインに並べたツールです。きっと皆様のお役にも立てるだろうと考え、JSON API も含めて全データを無償で公開しています。

トラッカーの画面

Google の変化の記録

Google 公式の Search Status Dashboard は 2021 年以降しか遡れません。それ以前の履歴は、古いブログ記事や個人のツイート、あるいはすでに消えてしまった外部ツールに、断片として散らばっているのみでした。

幸いなことに、DemandSphere では 20 年以上にわたって、社内のアノテーションデータベースに Google のアップデートを記録し続けてきました。Florida(2003)、Panda、Penguin(2012)、Hummingbird など、名前のついたアップデートの大半は、そこに残っていました。

このデータを眺めながら、ふと思いました。自分たちだけで抱えていても仕方がない。ぜひ業界の皆様に使っていただこう、と。

整理して見えてくるもの

リリース変更点
2013Hummingbirdコアアルゴリズムを意味理解ベースに刷新
2015RankBrain機械学習を導入。未知のクエリ(全体の 15%)を処理
2017Transformers論文「Attention Is All You Need」発表。GPT・BERT・Gemini の基盤になった
2019BERT深層 NLP を英語クエリの 100% に適用
2021MUMマルチモーダル AI。BERT の 1,000 倍、75 言語対応
2024AI Overviews生成 AI が検索結果のメイン領域に登場
2025AI Mode完全対話型の検索インターフェース

こうして並べると、AI 検索は突然現れたのではなく、「少しずつ表面化してきた」ものだとわかります。直近で起きたのは、AI が表に出てきたというだけのことです。裏方のランキングシステムは、もうずっと前から AI で動いています。

SEO 戦略が AI オーバービュー対策で止まっているなら、それは 13 年続いてきた進化の表層だけを見ているようなものです。

日本でも状況は近いと感じます。2024 年の AI オーバービュー展開以降、「AI 検索時代が来た」という語り方が増えましたが、実際にはその前から、検索には AI がゆっくりと織り込まれ続けていました。タイムラインで俯瞰すれば、この感覚は業界でも共有しやすくなるはずです。

公開したもの

ツール名は Google アルゴリズム & AI 検索 アップデートトラッカー。データソースは 3 つです。

  • Google Search Status Dashboard: ページ読み込みごとにライブ取得(2021 年以降)
  • DemandSphere の独自データベース: 20 年分の社内アノテーション(Dashboard 以前を網羅)
  • Google Research の出版物: AI マイルストーンは論文とプロダクト発表から抽出

タイプ別(Core / Spam / AI / System / Other)、年別、キーワード検索、ハッシュリンクでの直接共有(#bert のように)など、実務で使いたい機能は一通り揃えています。

API は CC BY-NC 4.0 で公開しました。認証不要、レート制限なし。出典として DemandSphere を明記いただければ、あとは自由にご活用いただけます。

トラッカー:demandsphere.com/research/demandsphere-radar/algorithm-update-tracker/

API:demandsphere.com/research/demandsphere-radar/algorithm-update-tracker/api/

検索コミュニティへの貢献

検索が急速に変わっていくこの時期に、20 年分のデータを誰でも使える形で残しておくこと。SEO の世界に長くいる人間として、これが業界コミュニティに対してできる、いちばん意味のある仕事だと考えています。今後も、役立つツールを順次追加してまいります。

日本では 7月に無料で参加できるカンファレンスも開催します。ぜひご参加ください。

オンライン参加受付中。近日中にオフライン参加の申し込みを開始します。