個人向け、法人向けに幅広くインターネットサービスを提供するソニーネットワークコミュニケーションズ社に、社内でのデータ活用推進のお取り組みについてお話を伺います。インタビューにご協力頂いたのは、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社カスタマーコミュニケーション部門CXデザイン部データマネジメント課の澤村様です。同部門は、デジタルテクノロジーを活用し、顧客接点、顧客体験の価値を創り出すことをミッションに取り組んでいらっしゃいます。
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社カスタマーコミュニケーション部門CXデザイン部 データマネジメント課 澤村様
SEO関連データを社内データと連携させて可視化
ソニーネットワークコミュニケーションズ様は、多くの事業部、多くのサービスを運営されていますが、どういった形でデータを活用されていらっしゃいますか?
「当社では個人向け、法人向けに複数のサービスを各事業部が提供していますが、私が所属するカスタマーコミュニケーション部門CXデザイン部 データマネジメント課では、全てのサービスのデジタルマーケティングに関連するデータを統括しています。そして、各事業部で必要なデータを、事業部内で活用しやすい形に集計や加工をして提供しています。各事業部内では、事業部のマネージャー、ウェブサイト企画、広告担当、デザイナーやディレクター、システム担当者など幅広いメンバーがデータを活用しています。具体的には、GinzaMetricsが提供するようなSEO関連のデータ、アクセス解析、ABテストの結果、サードパーティデータなどのウェブ関連のデータと、売上、CRM、会員属性等の社内データを、BIツール「DOMO」を使って集約しています。それまでは、データの鮮度や一元性を保てないという課題があったため、データの活用促進を目的にDOMOを導入し、GinzaMetricsなどの各ツールと連携して活用できるようにしました。」
ISP事業を中心に個人向け、法人向けに幅広くサービス、ソリューションを提供
検索順位などは、SEOが事業に直結する企業でも、SEO担当以外の方に興味を持ってもらうことに苦労している会社が多いように思いますが、御社は幅広い方にSEOのデータが活用されているようです。どういった工夫をされたのでしょうか?
「SEO関連のデータだけでは、SEOに直接携わるウェブサイトの担当者以外は、やはり関心が強くないと思います。当社の場合は、売上やCRMのデータ等、ビジネスに直結する社内データと、SEOなどデジタルマーケティング関連のデータをまとめてBIツール上で見られるようにしたため、SEOにも関心を強めてもらえたと思います。GinzaMetricsはAPIを提供してくれているのでBIツールと連携しやすくて助かりました。また、5、6年ほど前から、定期的に社内向けの勉強会やメルマガなどを通じて、ノウハウや事例といったナレッジの共有を行っています。例えば、GinzaMetricsでも検索順位や想定流入数などのデータが表示されますが、そのデータは良い状況を示しているのか悪い状況を示しているのか、あるいはその変化にどういった要素が影響しているのかを判断するには、SEOやデジタルマーケティングの基礎的な知識が必要になります。そういった必要な知識やノウハウ、事例を、勉強会や社外から講師を招いてのレクチャー、定期的なメルマガなどを通じて啓発しています。」
実施できる施策の幅が広がり、スピードが上がった
社内データ、社外データの集約といったシステムインフラ整備と、データ活用のためのナレッジ共有の組み合わせで、データ活用が進んでいったわけですね。社内での取り組みに変化は感じますか?
「まず、何よりデータ活用して業務判断をするメンバーが増えました。昔はSEO関連のデータは、ウェブサイト担当以外は、それほど活用されることはなかったと思いますが、最近は、制作担当などからも、SEO関連のデータについて要望が出るようになりました。その他のデータも同様にそれまで見ていなかった担当者が活用しています。また、データを多くのメンバーが活用するようになり、施策が迅速に行えるようになりました。これまでは実現しづらかった施策も、データ起点で議論されるようになり、課題や成果が共有しやすくなったためだと思います。SEOに関しては、検索市場や競合の状況も踏まえた意思決定が行いやすくなりました。例えば、契約件数等の社内データだけから判断するのではなく、市場の検索ボリュームの推移や、競合がSEOに注力している等といった自社以外のデータが可視化されることで、状況をより正確に把握し、その後の投資判断をより的確にすることができるようになりました。こういった事業判断や施策は、ウェブサイト担当だけでは行いづらいですが、データが広く活用されることで、実施されるようになってきています。」
確かに、今のSEOはウェブサイト担当のテクニックだけでは成果が出しづらく、一方で、事業全体で取り組むことで成果が出るようになっていると感じます。そういった取り組みが行いやすくなっているのは、大きなアドバンテージですね。
社内で広くデータ活用できるようにすることで施策の幅が広がり、スピードが上がった
GinzaMetricsとBIツールの使い分け方
GinzaMetricsの活用方法について、もう少しお話いただけますか?
「GinzaMetricsのデータは、APIを通じてBIツールで見るデータと、GinzaMetricsのダッシュボード上で見るデータに分けています。BIツール上では、サイトの状況をSEO以外のデータを併せて俯瞰的に把握する際のひとつの指標としてSEO関連のデータを大きめの粒度で活用しています。そしてSEOに関する状況把握を行う時や、より深掘りした具体的なアクションに近いデータを見たい時には、GinzaMetricsのダッシュボード上でデータを見るようにしています。具体的には、自社や競合他社の順位や想定流入数などを中心に見ています。GinzaMetrics上のダッシュボードは、用途に応じて作成して使っています。また、自動で定期的にメールレポートが送られてくるのも助かっています。アラートの機能ももうすぐリリースされると聞き、期待しています。」
GinzaMetricsのデータをGinzaMetricsのダッシュボードとBIツールで使い分けて活用
GinzaMetricsを積極的に活用していただき、ありがとうございます。GinzaMetricsの今後の開発の参考にさせていただきたいのですが、御社は今後、データ活用に関して、どういった取り組みを進めていかれるのでしょうか?
「これまでの取り組みで、データが社内で広く普及し、各メンバーが事業や業務の判断にデータを活用するようになりました。この取り組みを継続していくことで、社内に更にデータや知見が溜まっていきます。今後の展望のひとつとして、蓄積したデータから予測データを算出する機械学習なども組み込み、意思決定の精度を高めつつ、人は、顧客のインサイトや新たなサービス、施策等に注力するといったスタイルを発展させていきたいと考えています。」
まとめ
今回は、ソニーネットワークコミュニケーションズ様にデジタルマーケティングでのデータ活用についてインタビューをさせていただきました。要点は以下の通りとなります。
- SEOやアクセス解析などウェブデータを売上、CRM、会員データなどの社内データと連携させて活用できるようにしたことで社外データの重要度が高まった。
- データを活用するためのベースになる知識やノウハウを継続的に共有し続けたことでデータ活用度が高まった。
- 幅広いメンバーにSEO関連のデータが活用されるようになり、実施できる施策の幅が広がり、スピードも高まった。
- GinzaMetricsのデータは、BIツール上では俯瞰的なデータ中心に活用し、GinzaMetrics上ではSEOの施策に近い深掘りしたデータを活用している。
- 今後は、積極的に機械学習などを取り込み、担当者の意思決定の判断基準・情報確度・スピードを高度化していく方針。
データ活用に関して非常に参考になるお話をお聞かせいただき、ありがとうございます。