検索データに透明性を。オブザーバビリティ機能の追加

順位が急に落ちて、おかしいと思ったことはありませんか。本当に順位が下がったのか、データを取得する側に問題があるのかを判断する手がかりがあれば、次の一手は大きく変わります。DemandSphere が公開した新機能オブザーバビリティ(Observability)は、そのための機能です。ユーザーのみなさまは、DemandMetrics 内に表示されるタブからご利用ください。

背景には、検索データそのものが不安定になってきた事情があります。データが揺れる時期にベンダーが何も語らなければ、お客様は不安のなかで数字を読むことになります。ですから弊社は、データの状態も数字でお見せすることにしました。

オブザーバビリティとは何か

オブザーバビリティ(可観測性)は、もともと開発や IT インフラの世界で使われてきた言葉です。システムの内部状態を、外から得られる情報で把握できる度合いを指します。日本でも開発現場ではすでに定着していますが、SEO や AI 検索の領域ではまだ馴染みがないかもしれません。しかしこの機能によって、データがどの程度信頼できるかを確認することができます。

一般的には、オブザーバビリティには次の3つが基本データとされています。

ログ:個々のイベントを記録した生データ
メトリクス:イベントを集計した主要な指標
トレース:指標から元のログまでさかのぼるための手がかり

モニタリングと似ていますので、違いを整理しておきます。モニタリングは、あらかじめ決めた条件に当てはまったときに知らせる仕組みです。オブザーバビリティは、想定していなかった問いにも、データを自由に掘り下げて答えられる状態を指します。

弊社では、さらに検索マーケター向けに必要な指標を考え、使い勝手を工夫しています。例えば SERPデータの取得状況やエラー率、サンプリング率などがご確認いただけます。これによって

なぜ今、オブザーバビリティが必要なのか

この1年で、検索データを取得する環境は大きく変わりました。主な出来事は次のとおりです。

2025年9月:検索結果を100件まとめて取得する方法が使えなくなりました。
2026年8月:検索結果のリンクが、Google の中継 URL(google.com/goto)を経由する仕様に変わりました。
2026年9月:取得へのブロックが強まりました。複数のツールベンダーが、不完全または歪んだ検索結果が返っていると公表しています。

こうした変化のたびに、データは影響を受けます。どこまでが実際の順位変動で、どこからがデータの乱れなのか。さらに、多くのツールは「サンプリング」などの名目で勝手にデータを補正することがあります。こうしたことは、ベンダーに説明責任があります。

しかも、見るべき点はエンジンごとに異なります。Google と ChatGPT では、エラーの出方も、取得できる範囲も違うからです。検索データは、AI の開発や分析でも需要が高まっており、取得の難しさは今後も続くでしょう。

そこで弊社は、「データについてのデータ」を毎日確認できる形にしました。自社の取得がうまくいっていない日も隠すことができませんので、恥をかいたり批判をされる可能性もあります。それでも、状況をそのままお見せすることがお客様にとってメリットになると考え、この機能をリリースしました。まずは、本記事で紹介する DnP の分析や生データと補正について、オブザーバビリティ機能からご確認いただけます。

Tracking Health Report
イメージ図
状態良好1〜3位 安定 99.8%4〜10位 安定 95.0%11〜20位 安定 96.4%
日別の平均順位
0510154月5月6月7月8月9月
生の順位補完後の順位
数値はダミーです

DnP検知

この1年、特に Google のデータには大きな変化が続きました。確認できたものはアップデートトラッカーに記録しています。

そのなかで、まだ公に話せていなかったのが DnP(Drop-and-Pop)です。Google が、あるドメインの順位を数日間だけ大きく下げ、その後に元の位置へ戻す現象を指します。以前から、程度の差はあれ発生していました。

5月頃からこれに関連問い合わせが増えてきました。影響の大きさや頻度、どれくらいが回復したのかを示す手段が必要でした。そこで、オブザーバビリティの最初のテーマとして DnP を取り上げました。順位が圏外に落ちても、7日以内に戻れば DnP として数えるようにしたのです。8日以上戻らなければ、一時的な変動ではなく、圏外に落ちたと判断します。

以下は、デモでよく使う REI(米国のアウトドア用品小売)のドメインの画面例です。基本的に順位は安定していますが、一部圏外になるキーワードがあります。それらは、「圏外の可能性あり」としてフラグされ、7日後に「圏外確定」または「一時的な下落(DnP)」と判定されます。

順位帯 × 分類(検索ボリューム加重)
シェア・オブ・ボイスの対象となる主要な順位帯です。各セルは、その順位帯の検索ボリュームに占める分類ごとの割合と、キーワード数を示します。圏内のまま10位以上下がったキーワードは、この表では省いています。
順位帯安定圏外の可能性圏外が確定DnP
落ちる前が20位以内
1〜3位
1,059件 · 月間検索 9,592,500
99.8%
1,044件
0.0%
1件
0.1%
10件
64.8%
1.6回/語
4〜10位
469件 · 月間検索 1,842,280
99.3%
450件
0.0%
2件
0.0%
10件
80.6%
3.6回/語
11〜20位
75件 · 月間検索 327,350
99.9%
65件
0.0%
0件
0.1%
10件
98.7%
7.4回/語
読み方 安定:補完後、運用上問題のないキーワード。 圏外の可能性:期間の終わりに圏外だが、まだ8日未満。DnP として戻るか、圏外が確定するかは未定。 圏外が確定:8日以上圏外が続いた(のちに圏内へ戻ったものを含む)、または10位以上下がったあとに圏外になった。 DnP:7日以内に解消した圏外を1回以上経験した割合。

DnP の発生状況をトレンドチャートで見る5月に大きな波があります。原因はさておき、このタイミングに短期的な下落があったということです。

日別 drop-and-pop · キーワード数で加重落ちる前が20位以内
発生率は、現在 DnP の最中にあるキーワードの割合です。オレンジの破線は、境界ゾーンより前の日に当てはめた Theil-Sen 傾向線です。右端の境界ゾーン(直近7日間)は、補完の精度が下がるため網掛けにしています。
0%25%50%75%100%5月6月7月8月9月10月2026-04-092026-04-272026-05-152026-06-022026-06-202026-07-082026-07-262026-08-132026-08-312026-09-18
DnP 発生率診断用の傾向線
順位帯別の発生率 · 月平均
境界ゾーンを除外 · 途中の月は注記
順位帯2026年4月2026年5月2026年6月2026年7月2026年8月2026年9月2026年10月
途中 · 2026-10-05まで
期間平均
1〜3位0.4%2.3%2.1%1.3%0.4%1.1%–1.3%
4〜10位3.8%5.0%3.6%4.2%1.5%2.3%–3.4%
11〜20位8.9%9.6%6.7%7.7%4.4%6.0%–7.2%
順位帯の単純平均4.4%5.6%4.1%4.4%2.1%3.1%–3.9%
主要順位帯の合計 (加重)1.8%3.4%2.7%2.4%0.9%1.7%–2.2%

順位帯ごとの傾きを並べると、状況の見分けがつきます。下位であれば、よくある順位変動かもしれません。上位であれば、何か問題を疑うべきです。全帯で同じ傾向なら、計測側になにか不具合があるのかもしれません。

今週追加する指標

まずは DnP のような順位分析の延長にあるものからリリースとなりますが、今週、さらに指標を追加してまいります。Google が返す偽の結果の割合、全体のサンプリング率、欠損数内容です。偽の結果については、次の記事で詳しくお伝えします。

透明性が前提になる時代へ

これから先、データ戦略では、透明性とオブザーバビリティは欠かせないと考えています。検索の世界では特にそうです。Google 製のファーストパーティデータに頼るしかないという意見もあると思いますが、高すぎる依存度には疑問を覚えます。サードパーティデータを上手く使いこなすために、オブザーバビリティが鍵になるでしょう。

お客様がデータを安心して使っていただけるよう、今後も改善を続けます。ご質問やご意見があれば、お知らせください。