DemandSphereのオープンウェブに対するビジョン

DemandSphereのオープンウェブに対するビジョン

DemandSphereのオープンウェブに対するビジョン

DemandSphere 創業者CEOのレイ・グリセルフーバーがオープンウェブおよび当社のビジョンについてまとめた記事の日本語訳です。

 

私は米国に住んでいるため、日本を訪れると最新のテクノロジーやSEOの動向についてよく質問をいただきます。おそらく米国を拠点としたインターネットが、日本のものより「先をいっている」と思われているからでしょう。

時代の潮流というのは確かに面白いものですが、それはただ人々が未来に一体何が起こるのか知りたがっているからというだけではないでしょうか。それならば、将来を予測するために有用な手段があります。それは、歴史から学ぶことです。

 

オープンウェブ黎明期 ― The Early Days of the Open Web

私は今から20年前に大学を卒業しました。卒業後、インターネットの分野で働き始めたとき、当時のウェブは今のそれとはまったくの別物でした。今の若い世代が20世紀後半から21世紀初頭までのインターネットがどのようなものであったか全く知らず、経験したことがないのを残念に思います。

例えば今のインターネットがパチンコ屋のようだとすれば、その当時はパリやウィーンにある作家や画家が集まるようなカフェのような場所でした。新しいアイデアが次々に生まれ、すぐに実行されていきました。粗末なハードウェアでさえ。

オープンソースウェブサーバーや初期のデータベースは、当時高度な技術だと考えられていました。しかしもっと重要なことは、自由があったということです。例えばもしあなたが何か言いたいことがあったとすれば、誰もそれを止めようとはしなかったでしょう。

当時は次々とブログプラットフォームや新たな手段が誕生し、ブログ黄金時代を迎えようとしていました。標準化など全くなかったし、高品質なブログサービスもほとんどありませんでしたが、野望あふれる作家、開発者、画家や思索家などが次々とブログを開始したおかげで、インターネット上のあらゆるところで無料で、長い議論が巻き起こることとなりました。そこには情報の制限などなかったし、またもっと良い点として人々は自由にプライバシーを守ることもできました。ネット広告はまだ初期の段階にありました。つまり、標準化がなかったためにウェブはまだ混沌としていましたが、今よりずっと純粋だったのです

インターネットブラウザー企業に圧力がかかった結果、ウェブ標準が作られ強化された背景には、実はブログの存在とデザインやUXコミュニティで名の知られたブロガーたちの影響がありました。当然、これはとても良い変化であったと思います。

 

クローズドウェブの誕生 ― The Birth of the Closed Web

このとき、クローズドウェブ ― Facebook、Twitter、Googleなどといった巨大プラットフォーム企業の台頭と同時的に起こりました。もしあなたが細心の注意を払っていなかったり、最新トレンドばかりに気を取られて歴史を見落としているならば、これら巨大プラットフォームの台頭や中央集権化の動きは単なる偶然に過ぎず、ただのビジネスだと考えるでしょう。

インターネットのこの潮流は、歴史を学ぶことでより良く理解することができます。

 

メディアはメッセージである ― The Medium is the Message

中央集権的な巨大プラットフォーム企業は顧客ユーザーからの広告資金で成り立っています。広告という言葉はお金を連想させ、魅惑的なイメージを持つが、「広告 = 侵略、盗み、個人情報の売買」という一面も忘れてはならないでしょう。付け加えると、これら中央集権的なプラットフォームはとても強大で、次の2つを成果として収めてきました。

1つ目の成果として、彼らは神経伝達物質であるドーパミンを操る術に長けており、ユーザーの注目を完全なまでに魅了することができたこと。その結果、これらのサービスがウェブ上のコミュニケーションやアイデアの伝達の中心的媒介となりました。

2つ目に、先述の結果として、これらプラットフォームが言論や思想の自由を大きくコントロールしていることが挙げられます。今後状況が変化しなければ、我々は発言、ことば、さらには内なる意識、考え方までもがいずれ技術官僚的な支配を受けるおそれがあります。これは、マーシャル・マクルーハンが「メディアはメッセージである」と主張して伝えようとしていたことでもあります。

私たちが広告や中央集権的なプラットフォームに依存する限りは、我々を商品としてしか見ていない企業に生活のコントロールを委ねてしまうことを意味します。そのすべてを批判するつもりはありませんが、私たちはテクノロジーと上手に付き合う方法を模索するべきでしょう。DemandSphereは未だ小さい組織ではあるものの、「Help people realize that there are other options available(人々が他の選択肢の存在に気づく一助となる)」というビジョンを掲げています。

「Help people realize that there are other options available(人々が他の選択肢の存在に気づく一助となる)」というビジョンを掲げるDemandSphere

 

 

オープンウェブ的発想の重要性 ― Why the Open Web Matters for Sustainable Business Growth

オンライン顧客獲得のためには基本的に2つのやり方があります。有料獲得と自然獲得です。多くの場合、インターネット上での有料獲得とはつまり広告を意味します。自然獲得というのは広い意味を持っており、長期的な信頼獲得を前提に、顧客ロイヤリティが確立され、ビジョンが共有され、アイデアが広がって初めて実現するのです。

私はビジネスマンであり、企業や事業主(つまり、私達のお客様たち)が生き残り繁栄するためには、オンラインで顧客を獲得していく必要性があると理解しています。広告は特定の分野で力を発揮し、予算が許す限りは決定的な影響をもたらしますが、オーガニックな顧客獲得こそが、結果的に高いコンバージョン率、ブランドへの愛着心、信頼性、オーソリティにつながると考えています。その手助けをすることが我々の仕事です。それは起業時から今でも変わりません。

ウェブ上に存在するあらゆる企業は成長の余地がありつつも、ほとんどの企業が十分にその可能性に気づけていません。我々はデータと創造性を掛け合わせて用いることで、その潜在的可能性がどこにあるか突き止め、捉える方法を提示することができます。これが検索エンジン最適化(SEO)やオーガニックマーケティングに対する我々の見方です。特に、SEOはオンラインで企業の価値を高めるもっとも自然で持続可能な方法です。

SEOを上手に行うためには、まずSEOの全体的な理解が必要。SEOは日によって変化するランキングやトラフィック、セールスなどをただ単に眺めるというのではありません。あなたのウェブサイトのあらゆる側面を向上させることであり、それは技術的かつ構造的なバックエンドからUIやUX、そしてマーケティング戦略、ブランディング、セグメンテーションまでをも網羅します。

当社はシステム思考や世界に対する戦略的な見方を日々の仕事に活かすという強みを持ち、一緒に働きたいという企業や組織を惹きつけてきました。SEOは多くの人が考えているより、もっと戦略的で哲学的な分野です。それは、エンジニアからデザイン、セールス、マーケティングなど様々な役職に就いている人が学ぶことでキャリアを広げられるものです。今日、ネット上に存在する中でも、かなり面白い問題を私たちは扱っているのだと胸を張って言えます。

そして同時に、我々はオープンウェブ的にビジネスを構築しています。長期にわたって、私たちはハックやスパムのような短期的行動を推奨していません。強力なSEOを実現するものは、同時にオープンウェブ的なアクションなのです。私たちは10年以上、以下のような取り組みを続けてきました。

・整理された安全なサーバ環境
・卓越したUX
・高いデザイン性
・ユーザーへの理解
・広告ではなくサブスクリプションモデルとリテンション(既存顧客維持)の遂行

 

我々はオープンウェブの理想とするものと技術を支援し促進することで、お客様の成長可能性を見出す一助となれると確信しています。インターネットはクローズドウェブを指すようになって久しいですが、オープンウェブは今も良い状態で現存しています。これからも持続的に強化していくとすれば、それは私たちの未来となるでしょう。

 

真実を調べる方法を知っていれば、メディアを信用する必要はない ― “You don’t have to trust the media if you know how to find information yourself and seek the truth.”

日本の全ての若い世代に伝えたいことがあります。できるだけ英語を勉強し、可能な限り国外に存在する情報に目を向けてほしいということです。日本が米国などの国々に劣っているというのではありません。日本では得られない情報が世界中には転がっているからです。
もちろん逆も然り。私は日本にいる間、できる限り沢山勉強し学んでいます。学生の頃から日本語の勉強はずっと続けています。というのも、アメリカのメディアや情報源だけでは得られないことがたくさんあるからです。

また、新しく登場した分散的プラットフォームをおすすめします。NHKやツイッターで目に飛び込んでくるような情報とは異なることを言うポッドキャストやYouTubeチャンネルを探してみてください。時間をかけて情報を探し、時間をかけて理解することになりますが。私はただ昔風のやり方に戻れと言ってるわけではなく、それらアナログ技術の媒体は、より人間らしく本質的な方法で考えを共有するという点で大切だからです。

私は Twitter、Instagram、YouTube などを常に使っています。しかし同時に私は、それらで出来ないこと、そしてこれらの企業が今後どうなるかを知ろうとすることなのです。私は、中央集権的で技術官僚的なプラットフォームでなく、分散的でオープンソーステクノロジーや、そういう考え方がもっと優勢な世界を切望しています。

 

お世辞はあなたを隷属化する。美徳は自由をもたらす。 ― Flattery will enslave you. Virtue brings freedom.

最後に一つ、今日のビジネスやスタートアップにあるカルチャーについて述べておきます。それは、これを読んでいる人がどういった会社で働きたいか決める時に参考になると思ったからです。また、これを明らかにすることで当社 DemandSphere のカルチャーに合わないようなタイプの人を回避することもできるでしょう。

私はサンフランシスコとシリコンバレーで計7年を過ごしました。その頃よく見かけたのですが、経営陣は社員に、あなたたちが新時代のエリートであり、誰よりも優れているからここで働いているのだ、と熱心に伝えるのです。マッサージ、無料の食べ物、おもちゃ、ゲームの提供などの福利厚生を社内で充実させることで、経営陣はこのメッセージをより強固なものにしていました。そんな光景が、シリコンバレーではいたるところで見受けられたのです。

「エリート」は定義として、他人より優れていて特権を持っていることを意味します。しかし、これは自分が偉くなったような気になるために他人を下に置き続けるという構造を作り、維持し続けなければいけません。こういうシステムは偽物であるし、こういったスタートアップ企業で働く社員は実は誰もエリートなんかではないのです。世界に存在する本当のエリートというのは、全てのテクノロジー企業が軌道に乗るように基盤を支えている、ごくわずかな人々を指すのです。時価総額や実際の影響力という点では、この世界の本当のパワーに比べると、これらのホットな企業というのは一片の埃でしかありません。あなたが旧家や特権階級の家系との血縁関係がある場合でない限り、あなたはエリートの一員ではないし、今後なることもないのです。偽物の「エリート」に誘惑されてはいけません。

 

世界最大ローマ帝国も劣情を利用した民衆政治をして、やがて滅亡の一路をたどった
ローマ帝国は歴史上最大の世界帝国でしたが、民衆の誰もが”エリート”の一人になることを切望するあまり、劣情ばかりに気を取られ”virtue”(美徳)を見失ってしまったのでした。やがてローマ帝国は、西ゴート族の王アラリック1世に滅ぼされてしまいます。

 

では、この神話はなぜ伝えられてきたのでしょうか。古代ギリシャの哲学者プラトンは、人間は劣情を利用すれば大衆を簡単に動かすことができるということを2500年前すでに知っており、人々に教えていました。

劣情とは我々人間のエゴやナルシスト的一面に訴えるもの。もし私がある人間を下に仕えたいと思うとします。私はまず彼をおだてるでしょう。すぐに彼は少しの神経伝達物質ドーパミンと引き換えに、自分の意思を動かす主権を私に委ねてくれるでしょう。こうして劣情というのは働くのです。

官僚的な企業で社員たちを「新しいエリートだ」と褒めちぎるのにはこういった背景が隠れているからではないでしょうか。それは才能を惹きつけるための、悲しい嘘なのです。

興味深いことに、サンフランシスコにあるこういった企業が長い間そういって見せかけを維持することができたのは、ベンチャーキャピタルからの投資に大部分を頼ってきたからでしかなく、本質的成長ではないのです。最終的にこれが原因で、映画「マトリックス」のような環境を作り出し、与えられた仕事と無駄に家賃の高い家で身動きが取れず社員を不幸せにするしかなくなってしまいました。アメリカの名だたる企業たちは未だに日本でとても強力なブランド力を固持していますが、サンフランシスコではすでに、賢く優秀な人々の間で、上述のような会社を避ける動きが出てきています。

我々が自ら探し求めてきたのは、誰にでも入手可能なもの、言うなれば “virtue(美徳)” です。我々はお客様に対して素直さ、勤勉さ、価値あるソリューションを導き出すことで、自分自身とその家族に良い生活をもたらすことができます。最近はもっぱら、”virtue”という言葉を耳にすることはそう多くなく、その意味も薄いものになりつつあります。しかし、ラテン語や中世イタリア語では本来、人生をかけて強さを追求し、優れた戦略を立て、自分自身を高め、そして世界を良くすることを意味して使われていました。

我々は、情報を蓄えて、他より優れているというかのように振舞ったり、他の人々と一線を画し、能力的に優れているとか、エリートであるとか言いたい訳ではありません。私たちは、美徳的な成長に時間と労力をかけ、オープンウェブでの本質的成長を通じてお客様の成功を導くことで、私たちの会社と家族を育て上げたいのです。

これが私たちDemandSphereの哲学であり、ビジョンであり、使命です。

もし興味があって私たちについてもっと知りたければ、ぜひ連絡をください。喜んでお話をしたいと思います。メールはvision(at)demandsphere.comまで。それではまた。