Google は米国時間の5月10日に年次イベント Google I/O を開催しました。本記事では、検索マーケターのお客様に影響のある部分をピックアップしてご紹介します。イベントの全容が知りたい方はこちらからご覧になれます。基調講演が始まる前の1時間ほどのカウントダウンは、スキップしましょう。
今回の I/O は非常にエキサイティングなスタートを切りました。今回の基調講演は、Google が初めて AI革命について長時間に渡り語り、首尾一貫したビジョンが提示されました。Google検索、マップ、フォト、Workspace、モバイルデバイスなど、それぞれの主要製品において、ユーザーの課題と AI による解決策を見つけ出したといえます。下落傾向にあった Google(Alphabet)の株価は 4% 以上もジャンプし、多くの関係者からポジティブに受け止められました。
検索マーケターにとって一つ明らかになった事実は、今後は物事が荒々しく変化するということです。Google検索やコンテンツに関連するすべての物事は今までにない速さで、機械的に変化していくでしょう。
我々のような SEOツールベンダーだけでなくパートナーのコンサルティング会社や事業会社のお客様の間でも不安が広がっているように感じます。以下の要約と考察をお役立ていただけますと幸いです。
サーチ責任者による未来図
Google は The Keyword というブログを公開しました。I/O での基調講演よりも、こちらの方が SEO に関連する情報がまとめられた記事があります。

検索担当 VP&GM のエリザベス・リード氏による “Supercharging Search with Generative AI ” という投稿には、これから起こる大きな変化が書かれています。検索がスーパーチャージする(増強する、高速化する)とはどういうことでしょうか。
検索の変革ビジョンがまとめられたショートビデオ
プロンプト化する検索
まず最初に述べられているのは、AI を活用して SERP フィーチャーを展開することです。例えば「3歳以下の子供と犬を連れた家族にオススメのスポットは?」という複雑な検索クエリを想像してください。検索者が情報の整理をしたり、複数回の検索を実行する必要があるでしょう。この行動を AI が代行するというのが、リード氏の説明です。
情報のポイントを AI がまとめてリッチなスニペットを表示したり、「子供とどれくらいの時間を過ごしたいですか?」などの追加質問をして検索をプロンプトにします。これにより、今までよりも早く簡単に検索者を満足させることができるのです。
「3歳以下の子供と犬を連れた家族には、ブライスキャニオンとアーチーズのどちらが良いか」の検索結果
うまく機能すれば検索行動が大きく変化し、検索が個別のイベント(キーワード検索)を行う代わりに、検索が新しいコンテキストを生成するプロンプトとなり、ユーザーと Google の両方にとってより良いエンゲージメントとなるでしょう。
新しいショッピング体験
また本稿では、Googleのショッピンググラフがこの機能にさらに統合されることについても言及されています。Google がもつ膨大なショッピンググラフを活用し、検索者は今までよりも簡単に欲しい商品を見つけ出せるようになります。
新しいショッピング検索のデモ
マーケティング担当者は、マーチャントセンターに商品データをフィードするか、自社サイトのメタデータで商品を表示させるか(またはその両方)の選択肢を持つことに変わりはありません。SEO担当者は、商品リストとメタデータを非常によく最適化し、Googleに正しく理解される必要があります。
今後、さらに多くのことが起こることは明らかですが、SEO の業務が大きく変わることはありません。ただし検索行動が変化したり、施策の優先度を見直す必要はあるかもしれませんので、早期に他部署と連携するべきでしょう。
コンテンツ制作の大きな変化
今回の I/O ではユーザーやコンテンツ制作者にとって無視できないような、便利なイノベーションがたくさん発表されました。Google検索のアップデートを除けば、Workspaceのアップグレードが最も印象的でした。
Google の新しい「Help me write」機能は、簡単なプロンプトで文書、電子メール、職務経歴書などが作成できます。操作が非常に簡単で、ボタンをクリックするだけでプロンプトを洗練させ、コンテンツを拡張することができるようになります。
SEO目的の自動ライティングツールは淘汰されてしまうかもしれませんが、 コピー&ペーストが Google に管理されないという点では優位性があります。これが時間の経過とともにどの程度重要になるかは、まだわかりません。
どのようなツールを使うにせよ、コンテンツ制作会社は、人間によるライティングよりもエンジニアリングに重点を置く必要があるでしょう。
クリエイティブ面で Adobeとタッグ
GoogleフォトやGoogleスライドなどで、まったく新しい画像編集ツールが利用できるようになりました。クリエイターは、これらの機能が好きか嫌いかのどちらかでしょう。あるいはその両方?
クリエイティブな才能がない人は大好きかもしれません。注目すべきは、Google が Adobe Firefly との提携を発表したことです。画像やその他の創作物を生成するジェネレーティブAI機能をさらに充実させていくでしょう。画像生成の実力は定かではありませんが、Adobe との提携は OpenAI の DALL·E や Midjourney とも本気で戦うつもりだと考えられます。
PaLM 2 リリース
PaLM 2 は、Google の大規模言語モデルの最新バージョンです。前/現バージョンの PaLM は、 Bardなどを支えている言語モデルです。PaLM には、様々な用途に合わせたサイズの4種類のモデル(Gecko、Otter、Bison、Unicorn)があり、現在は 100以上の言語をサポートしています。プログラミングコードや数学、さまざまな文体を理解する能力も大きく向上していることが強調されました。
全体として、Google は、OpenAI 製品のリリースによって普及した多くのパラダイムを基にしながらも、より多くの価値をもたらすために自社のアセットを活用し、迅速に価値を高めるAIのアプリケーションに焦点を当てているようです。
言語モデルは Langchain, BabyAGI, Auto-GPT, LlamaIndex などのオープンソースフレームワークも数多く登場していますが、これらは LLM を様々なデータを接続した汎用的なものです。PaLMの特長は、自社の製品群全体とのコラボレーションであり、汎用的なモデルには作れない回答を生成することです。
彼らはAPI を公開しており、まだアクセスできない人でも、どのようなことができるのか、一足先に知ることができます。
Gemini 発表
今年の初め、GoogleはGoogleのBrainチームとDeepMindチームが統合したことを発表しました。Google Brain は社内で立ち上げられた AI 研究組織で、DeepMind は買収されたイギリスのスタートアップです。それぞれ独立した組織でしたが、ついに手を組むこととなったのです。
彼らは Gemini と呼ばれる新モデルを共同で開発しています。I/O の基調講演ではあまり詳細には触れられませんでしたが、PaLM 2の次にリリースを予定している次世代モデルということのようです。ウォーターマーク(電子透かし)について触れられましたが、ほかの AI にも類似のトラッキング機能は搭載されているでしょう。
終わりに
新しい発表や技術のリリースがあるたびに、SEO担当者は常に自問自答しています。 “SEO is dead?” しかし、いつものようにSEO は今後も必要な業務であり続けるでしょう。コンテンツがあり、インターネットで物を探す人がいる限り、SEO が死ぬことはないのです。
関心を持つべきは、SERP がどのように進化し、それがユーザーの行動にどのように影響するのかということです。今回明らかになった最大の変化は、AIが SERP フィーチャーとして導入されることです。
Google が何度も実証しているように、Google は検索結果をできるだけ長く自社のプロパティに留めておき、そのユーザーをすべてのWebサイトに送り込むことに関心があります。ですから、ウェブサイトは存在し、リンクは存在しますが、より魅力的な検索方法が存在する可能性があります。
進化に伴い、サイトオーナーにとって重要なのは、検索結果だけでなく、コンテンツに対する反応にも自社のコンテンツや製品が表示されるようにすることでしょう。従来のSEOのベストプラクティスの多くが適用されますが、構造化データ、ナレッジグラフ、質の高いコンテンツの重要性が増すと思われます。
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