今回はSEOビギナーのみなさまに向けて、最初におさえておきたい基本的な考え方や施策の取り組み方をご紹介いたします。
本記事は2019年11月のアユダンテ社との共催セミナー『Lights』より、当社のプレゼンテーションを2022年にテキストコンテンツ化したものです。Googleの変化などを反映させ、いくつかの新しい情報や補足を加えさせていただきました。
1. Google を知ろう
SEOの仕事は、まず検索エンジンを理解することからはじまります。検索エンジンを理解しないと場当たり的な取り組みになってしまいますし、検索エンジンはめまぐるしく変化しているので、小手先のテクニックを学んでもすぐに役に立たなくなってしまうからです。
Googleの中の人はこわくない
まず最初に、Googleは謎の組織ではないことを知っておきましょう。Googleの中の人は気さくな方ばかりです。日本オフィスにはエヴァンジェリストの方がいて、質問ができるオフィスアワー(YouTube配信)も定期的に開かれています。海外のGoogle社員の方もよく来日され、日本のウェブマスターと交流されています。ぜひ Google社が催すイベントやコミュニティ、コンテンツ配信などに参加してみましょう。
Google の 金谷武明さん と 小川 安奈さん、ジョン・ミューラーさん
リンク: オフィスアワー(Google Search Central) の YouTube
Googleはいろんな情報を発信している
ほかにもGoogleは様々なコンテンツを用意しており、膨大な情報を公開しています。例えば Google Cloud のコンテンツに「AIと機械学習」というものがあります。もちろん彼らはGoogleの仕組みを説明しているわけではないのですが、中には極めて “Googleならでは” の情報も含まれており、非常に参考になります。 公式情報を把握することはSEO担当者にとってルーティンワークのようなものですので、ぜひウォッチしてみてください。
SEO関連ニュースでは見かけない情報を見つけられることも
リンク:
- Think with Google (マーケティング関連情報、日本語あり)
- Google Cloud Blog(Google Cloud 情報、日本語あり)
- Tech Dev Guide(コンピュータサイエンス関連情報)
- Web Fundamentals(Web技術やブラウザ関連情報)
Googleは神ではない
繰り返しになりますが、Googleは謎の組織ではありません。毎日渋谷(かつては六本木)に向かって祈りを捧げているSEO担当者もいますが(笑)、Googleは神ではありません。Googleはただのシステムであり、作っているのはエンジニアです。 Google 創業者のラリー・ペイジは「完璧な検索エンジンとは、ニーズにぴったり一致する答えを返すもの」と述べており、検索クエリとコンテンツをマッチさせることが彼らの究極のゴールなのです。Googleは神などではなく、ただの(しかも未完成の)システムです。 ちょっと脱線してしまうのですが、イベントではドラマ「シリコンバレー」をご紹介しました。きっとGoogleのエンジニアはこんな感じなのではないでしょうか。
シリコンバレーを舞台にしたコメディドラマ
2. Google の仕組みを知ろう
では、Googleというシステムはどのように動いているのでしょうか。Googleは、アルゴリズムこそ複雑ですが、表面的には実にシンプルです。検索クエリをインプットすると検索結果というアウトプットが返ってくる、それだけです。会計システムとか3D画像処理システムの方がずっと難しいと思いませんか。
Googleはシンプル!
クロール、インデックス、ランキング
Googleがやってることは大きく3つに分解できます。まず情報を収集し(クロール)、それをデータベースに登録し(インデックス)、検索結果を適切な並び順で表示します(ランキング)。 SEO担当者はすぐに検索順位、すなわちランキングを改善したいと考えるでしょう。しかしそのためには、まずクロールやインデックスの問題をクリアしなければならないのです。ここがポイントです。Googleが見ていないページ、登録していないページはどんなに頑張っても検索順位を上げることはできないからです。
Googleがページを処理する流れ
まずはカバレッジを直そう
クロールとかインデックスとか専門用語ばかりになってしまいました。でもこれらを解決しないとランキングが改善できないことが、おわかりいただけたと思います。では、どうやってクロールやインデックスに対処するのか?ずばり Google Search Console のカバレッジ を確認して、Googleに指摘されている問題を直すべきでしょう。 カバレッジレポートは信号のようなものです。青信号ならOK、黄色は要注意、赤はダメです。グレーは…グレーです(笑)。またの機会に詳しく説明させてください。
問題のメッセージと対象ページを確認しましょう。
3. SEOを実践してみよう
少しずつSEOのイメージがつかめてきたでしょうか。Googleの仕組みを踏まえて、赤信号や黄色信号を減らすことが最初にやるべきことです。リンクを貼れば順位が上がるとか、h1にキーワードを詰め込めばいいといった古めかしいSEOテクニックに惑わされないように気をつけてくださいね。 打ち手はサイトごとに異なりますが、まずは情報収集が欠かせません。
情報を集めよう
前任者が何も残してくれなかった、なんてことはよくあることです。私も何度もそんな経験をしています。そういうときは自分でデータを集めるしかありません。 そんなとき、Search Consoleが最高のデータソースになるはずです。あなたのサイトを訪問するユーザーの検索キーワードとランディングページがわかる、これ以上ない貴重なデータです。 しかし困ったことに、Search Consoleは 16ヶ月以前のデータが見れない、期限つきのデータなんです。どこかにデータを保存しておけるといいですね。お手軽な手段として、Google スプレッドシートの Search Analytics for Sheets というアドオンでデータを一括取得するのがおすすめです。
Search Analytics for Sheets のデモ
便利なツールと実践演習
どのようにSEOに取り組んでいくのか、まだイメージできない方もいらっしゃると思うので、簡単なデモンストレーションをお見せしましょう。お題は「もしも私がAppleのSEO担当者だったら」です。しかも、Search Consoleが設定されていなかったとします。それでも大丈夫。無料のツールなどを駆使して私ならこんな風にSEO に取り組んでいきます。 まずはサイト全体を把握します。サイトマップというページがあったので、ここからURLを取得していきます。マウスでなぞってコピー&ペーストするだけです。
サイトマップ のページ
Excelに貼り付けて、URLを抜き出します。この処理にはスクリプトが必要なのですが、プログラミングの知識は必要ないです。ググれば素敵なサンプルコードがたくさんあるからです。セキュリティやパクリ行為に気をつけつつ、インターネットの知恵を活用しましょう。これでURLリストができました。Excelの「開発」タブがオフになっている場合は設定から変更してください。
慣れればあっという間に出来ます
今度はGoogleスプレッドシートも使ってみましょう。IMPORTXMLという関数が便利でして、タイトルなどを簡単に取得できます。また、「」Excelのようにスクリプトも使えます。ステータスコードを取得する関数を作ってみたいと思います。これもコピペなのですが。 ※スクリプトエディタはプレゼン時にはスプレッドシート「ツール」タブにありましたが、現在は「拡張機能」タブのApps Scriptに移行しています。 ステータスコードを調べて、404エラーのようなページがないか確認してみます。200というステータスコードは正常という意味です。おや、303というステータスコードを見つけました。気になりますね。(2019年11月時点)
便利な関数とスクリプトエディタ
303のページを調べてみます。300番台のステータスコードは「転送」なので、Link Redirect Trace というブラウザのアドオンを使って、どのような転送が行われているのか見てみましょう。どうやら3ページも転送されているようです。 こんなとき、SEO上級者は「Googleの気持ち」を考えるのが得意です。不要なリダイレクトをみて、「こんなサイトはクロールしたくないなあ」と発想できれば、SEOマスターへの道を一歩前進できるでしょう。
昔のURLが残っていたのでしょうか
施策をロードマップにしよう
URLやキーワードのリストとにらめっこして、これはどういうことだろう?と深堀りしていくとやるべき施策が見えてくるでしょう。 問題はここからです。「施策」の案を作って関係者を巻き込んでいくのが難しいのです。経験上、ロードマップを作成して取り組むのがいいと思います。SEOが未成熟なサイトの場合、だいたいこんなロードマップが出来上がってきます。
インハウスSEO担当者時代からよく作っているロードマップ
まずは基礎工事です。最初から内部リンクやカテゴリなども直したいのですが、経験的にフェーズを区切った方がうまくいく気がします。ユーザー中心のサイト設計を心がけ、関係者の意識を変革してからコンテンツに着手するのも大切です。テクニカルな点に気をつけながらもユーザー中心でSEOに取り組めると、丁寧にリッチなコンテンツを生み出せるようになるからです。
市場調査と効果検証
テクニカルなSEOをやるにしても、コンテンツマーケティングをするにしても、「どれくらいインパクトがあるのか、どんな効果があるのか」というのが上司の方の最大の関心事項だと思います。そこで市場のサイズを測ったり、効果検証の準備が必要になります。下調べせずに施策を打つとか、あとになってから効果測定をするのはよろしくないですよね。 ということで宣伝もかねてDemandMetricsのようなツールをおすすめします。大量のキーワードを調査して、検索ボリュームや順位に基づいて想定流入を算出できます。市場はどれくらい大きいのか、自分たちはどこまでリーチできているのか、目標はどれくらいにすべきかといった検討に役立ちます。
サイトを更新しなくなった結果、圏外だらけになってしまったケース
毎日データを蓄積しますから、効果検証にも申し分ないです。順位がいつ変わるかは誰にもわかりませんからね。SERPリワインドという機能は過去の検索結果をスクリーンショットのように確認できるので、とても便利ですよ。
キーワード「トヨタ」での2019年と2021年の比較
まとめ
ビギナーの方はまずGoogleを知ること、知ろうとすることが大切です。Googleを無視してコンテンツ作るぞ、では、いくらやっても成果が出ないかもしれません。 また、情報収集が欠かせません。データは消えてしまったり変化することも多いので、こまめに蓄積する体制を作りましょう。データに基づいて取り組めば、まわりの方々の協力を得やすいです。 SEOは一人ではできないことばかりですから、Googleを正しく理解して適切なデータを用いることが肝心なのです。データまわりのことがわからないな、という方はぜひ当社までご相談ください。