リクルートキャリア社のコンテンツマーケティング施策成功の裏にあるステークホルダーとのコミュニケーションとは

リクルートキャリア社のコンテンツマーケティング施策成功の裏にあるステークホルダーとのコミュニケーションとは

「コンテンツの評価指標(KPI)は自然発生外部リンク獲得」のインタビュー記事でもご紹介した、転職情報サイトリクナビNEXTサイトが2014年に実施し、Facebookいいね数5000超えを達成した”リクナビ次世代機能プロジェクト”コンテンツ。このコンテンツは約半年の準備期間を経て実施したとのこと。その期間には、US事例、競合事例のリサーチ、KPI設定等の時間も含まれていますが、それ以外にも外部パートナー、上長、他部署との調整があったと言います。

リクナビNEXT次世代機能プロジェクト

では、具体的にどのような調整を経てこのバズコンテンツが実施されたのか、株式会社リクルートキャリア 領域企画統括部 メディア企画部 集客グループ 小川 崇彦氏、中平 雅也氏へインタビューをさせていただきました。


<株式会社リクルートキャリア 領域企画統括部 メディア企画部 集客グループ 小川 崇彦氏(右)、中平 雅也氏(左)>

 

コンテンツ毎に企画・制作を依頼する外部パートナーを選定する

リクナビ次世代プロジェクトコンテンツの企画・制作は外部パートナーとタッグを組んで進めたとのこと。「実施するコンテンツによって、外部パートナーはその都度選びます。代理店を窓口に、複数の制作会社から数十の企画案を出してもらい、その案の中から議論を深めていきます。」と話す小川氏。「それぞれの制作会社には強みがありますが、最初の企画案からその強みが現れるわけではありません。何度もディスカッションを深めることによって、外部パートナーの強みを引き出していくことが、コンテンツ実施の成功につながっていきます。しつこくコミュニケーションを取ること、妥協しない姿勢を大事にしています。」(小川氏)

 

企画のネタは”転職”領域以外から考える

コンテンツを企画するにあたり、自社のビジネス領域を起点とするのが一般的。そんな中、敢えて自社の領域以外のアイディアを外部パートナーにも求めるという。「バズコンテンツは、自分たちが面白いと思う企画が重要。そうでなければ、コンテンツが拡散するはずがない。大抵の制作会社は、当社の領域である”転職”を軸に企画を提示してくるので、そうではない、というところから伝えていきます。当然、リクナビNEXT、リクルートエージェントのサービスでコンテンツを実施するので、最終的にはコンテンツと自社領域と結びつけますが、最初から領域に縛られると、アイディアの幅が狭まってしまいます。」と話す小川氏。

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KPI設定に対する上長とのコミュニケーションは?

KPI設定時には、どの企業でも上長との調整が発生するものだが、小川氏、中平氏はどのように上長へKPIについてのコミュニケーションを取ったのか。「SEO施策として、ホワイトハットをベースに考える必要があることを主張しました。既にUSでは自然発生リンク獲得を目的にコンテンツ施策が実施されていること、日本ではまだ事例が少ないので、今の段階から競合に先駆けて取り組むことが重要であると伝えました。」(中平氏)「SEOのKPI設定のみに関わらず、上長への説明は、上長が判断しやすいように、数値でのコミュニケーションを心がけています。具体的なコンテンツ企画案を提示する前から、KPIについて事前に上長と握っていたので、実際のコンテンツ実施時には、設定したKPIに沿って効果を振り返ります、と企画を通しました。」と話す小川氏。

 

バズコンテンツの炎上リスクにどう備えるか

バズコンテンツは拡散力の魅力と同時に、炎上リスクを伴うもの。一般的に、実施したいというアイディアが出ても、炎上リスクから冒険することを避ける企業も多いと聞く。そんな中、小川氏、中平氏はどのようにリスクに備えたのか。「炎上リスクについては、社内の広報・コンプライアンスチームと何度も打ち合わせを重ねました。広報・コンプライアンスチームは、炎上した場合の対応についての知見がある、その分野におけるプロフェッショナル。我々がやりたいことに対し、どのようにリスクに備えたらいいのか、協力してもらいました。」(中平氏)「企画に対し、どこまでがOKで、どこからがNGなのか。自分たちがそのラインを認識するために、複数の企画案を提示して広報・コンプライアンスチームにラインを示してもらい、知見を貯めました。」と話す小川氏。


<株式会社リクルートキャリア 領域企画統括部 メディア企画部 集客グループ 小川 崇彦氏(右)、中平 雅也氏(左)>

 

コンテンツが炎上した場合のコンティンジェンシー・プランを実施前に設定

クライアント側、ユーザー側、営業側、また第三者といったステークホルダー毎にクレームが発生した場合を予め想定し、それぞれの対応策を決めていたと言う。「炎上してしまった場合、メールでの対応、コンテンツの修正、閉鎖等、取るべきアクションは限られています。どの程度のクレームが発生した際にそれぞれのアクションを取るのか判断するために、いつ、誰が、何を確認し、誰に対してレポートをして、取るべきアクションの判断をするか。コンティンジェンシー・プランをコンテンツ実施前に設定していました。」と話す小川氏。

 

コンテンツの実施は時流も考慮して判断する

リクナビ次世代プロジェクト実施前に、炎上リスクの観点から取りやめたプロジェクトがあると言う。「実は、数ヶ月かけてリリース直前まで準備を進めていたコンテンツがありました。関係者との調整も完了し、さあ行くぞ!という時に、そのコンテンツのテーマに関わるニュースが多く報道されるようになりました。リクルートキャリア社として、このタイミングでそのコンテンツを実施していいのかを再検討し、取りやめました。ステークホルダーとの調整と共に、時流の考慮も重要な要素であると捉えています。」と話す小川氏。

成功するコンテンツ施策の裏側では、各ステークホルダーとの綿密なミーティング、事前調整プロセスがあることを改めて実感させて頂くインタビューでした。