「ロングテールSEOの成功のポイントはユーザーファーストの徹底にあり」エン・ジャパン社、田中氏インタビュー

今回は、エン・ジャパン株式会社デジタルプロダクト開発本部の田中嘉人氏にインタビューさせて頂きました。田中氏が運営するエン転職大辞典(以下、転職大辞典)は、転職に関する多種多様な悩みを、コンテンツを通じて解決するWebサイトです。検索エンジンから多様なワードで各コンテンツへ流入していきますので、ロングテールSEOの役割も果たしています。ロングテールSEOはビッグワードの競争が熾烈な業界では、一つの有効な施策である一方、コンテンツ制作の工数や、コンバージョンへ貢献するまでに広告などと比べて時間がかかることなど、クリアしなければならない課題もあります。

今回は、そういった運用上の課題を、どうクリアされているかを中心にインタビューしたいと思います。


<エン・ジャパン株式会社 デジタルプロダクト開発本部 田中氏>

 

長期的な取り組み

まず転職大辞典のマーケティング上の役割について伺いました。

「転職大辞典の目的は、主に20代の転職の初心者向けに、転職ノウハウを提供することにあります。若い方は、社会人経験やそもそもの人生経験が少ない分、転職活動で色んなことに悩まれます。履歴書の書き方であったり、退職の際の手続きだったり。転職の悩みは、なかなか周りの人に相談しづらいですし。転職大辞典は、そういった方に向けて、エン・ジャパンがこれまで転職のご支援をしてきた中で得られたノウハウを、コンテンツを通じて提供することが第一の目的です。その結果として、当社のことを信頼していただき転職サイトを利用していただければというスタンスで運営しています。短期的な利益貢献は、特にまだサイト立ち上げから1年も立っていない現段階では求めていません」

社内理解を得る方法

よくWeb担当者の方から「うちは短期的な刈り取りが求められるから、長期的な取り組みができない」といったことを聞きます。一方で、転職大辞典の場合は、ユーザーに役に立つコンテンツを提供し続け、長期的なリターンを得るという方針に、役員・上司の方まで合意して取り組めているのは、なぜでしょうか?

「小さく始めて実績を作ることが大事だと思います。正しいことであっても、最終的に利益につながるか確信の持てないことに投資し続けることは、さすがに難しいと思います。そこで、私が専任の編集長兼ライターとしてリソースを確保し、他の社員に空き時間を見つけて手伝ってもらうという方法で始めて、まずは小さくても良いので実績を作ることを優先しました。転職大辞典を始めて4ヶ月目ぐらいで、社内でも胸を張ってデータの共有ができるまでにはなりました。」

 

コンテンツを制作し続けられる理由

転職大辞典は、毎日最低1記事はアップし、Facebookの転職大辞典専用のアカウントの中でも情報発信を続けていらっしゃいます。コンテンツ制作の負担についても聞いてみました。

「転職大辞典を始めてまだ間もない時期に記事の内容が少し間違っていて、それをある読者の方がFacebookのコメント欄で指摘して下さった事がありました。まだ、それほどアクセスのない時期でしたが、すでに真剣に読んで下さっている方がいると実感し、あらためて責任のある仕事であると感じるとともに、やりがいを持つ事ができました。また、私は元々コピーライターだったので、コンテンツを作る事自体は、あまり苦労と感じたことはないかもしれません。」

「GinzaMetricsを使ってターゲットキーワードの順位が上がったか、流入につながったかは当然、見ています。やはり数値で成果が見えるとモチベーションアップに繋がります」

 

コンテンツの作り方

モチベーションが高いとは言え、毎日新しいコンテンツを考え続けるのは大変です。どうやってコンテンツを企画されているのでしょうか?

「毎月、一定数、検索回数のあるキーワードを選び、キーワードにマッチしたコンテンツを作成しています。キーワードは、検索ユーザーのニーズの現れだと思いますので、転職大辞典の目的からしても、キーワードを起点にコンテンツを作成することは合っていると思っています。キーワードの検索ボリュームも、シーズナリティがありますので、最近は、季節ごとの違いも考えて、コンテンツの企画を立てるようになりました。今はこの方法で、ネタ切れにはなっていません。社内の他のメンバーが、記事のアイデアを出してくれることもあり、周りに助けられながらやれているかなと思います。」


<社内メンバーからの協力も得られているという田中氏>

 

役に立つコンテンツ

転職大辞典の場合は、ただ闇雲にコンテンツを作れば良いのではなく、「役に立つ」コンテンツを作る必要があります。役に立つコンテンツを作るポイントについても伺いました。

「コンテンツの中身を作る際に気をつけているのは、記事の中で方向性を示すことです。読者は悩んでいる人たちですので、アンサーを提示することが大事だと思っています。また、簡潔な文章にまとめるようにしていて、各記事の文章量もそれほど多くはしていません。これは、履歴書を書きながら読んでいただけるようにしているということと、スマホのユーザビリティを意識していることが理由です。あと、SEOも大事ですが、転職大辞典のコンセプトがユーザーに役立つコンテンツ提供することになりますので、Googleファーストになりすぎないようにバランスは取っています。」

 

効果計測とPDCAの運用方法

ユーザーの役に立ったかどうかを数値で測るのは難しそうですが、効果計測やPDCAの運用はどうやってされているのでしょうか?

「今はPVとセッションを重視しています。また、その途中指標として検索順位も見ています。転職大辞典の流入経路は、ほとんどが検索エンジンです。転職に関連したキーワードで検索をしている時点で、そのユーザーは転職活動について悩みを持っているはずです。そのキーワードにマッチしたコンテンツが読まれているかを重視するという考え方です。PDCAの運用については、具体的には、まず狙っているワードで流入しているかを見ます。そして、検索結果の2ページ目以下のキーワードをチェックし、より上位に上げるためにコンテンツ内容をより充実させられないかを考え、リライトしていきます。」

 

GinzaMetricsの活用

「GinzaMetricsは順位計測で一番使っています。毎朝、順位をチェックして狙っているキーワードの状況把握しています。以前、パンダアップデートの際に、順位が落ちていた記事がありましたが、すぐに気付いて対処ができ、助かりました。今は、主に私が使っていますが、転職大辞典を通して培ったコンテンツマーケティングやSEOのノウハウを他のサイトの担当者にも展開していけたらと考えています。その際、GinzaMetricsの活用法も含めたノウハウを広げていきたいですね」


<順位により改善対象コンテンツを絞り込むことで多様なコンテンツのパフォーマンスを管理している(画面はデモ画面であり、実際の順位ではございません)>

 

まとめ

今回のインタビューを通して、転職大辞典はユーザーファーストの視点での運用が徹底されているなと感じました。また、コンテンツを重視したロングテールSEOの一つのモデルケースだと思います。ポイントを整理します。

  • ユーザーファーストなコンテンツを提供し長期的なリターンを得る取り組みとして捉えている。
  • ユーザーファーストなコンテンツをキーワード(顕在ニーズ)起点で企画している。
  • ユーザーの利用シーンまで想定してコンテンツを作っている。
  • 小さく始めて実績を作り、社内理解を得ている。
  • 大量にあるコンテンツの内、改善対象コンテンツを順位で絞って特定し運用を効率化している。

ぜひ、ご参考にして頂ければ幸いです。