競合サイトのトラフィックを分析して検索マーケティングの施策を検討する方法

3C分析はマーケティングの基本ですので、Competitor(競合)について調べるのは至極当然のことでしょう。しかし、広告代理店やリサーチ会社に依頼すると莫大なコストがかかる上に、残念ながら精緻な値は得られません。

それでは、どのように自社・競合サイトを分析すれば良いのでしょうか。本記事では、競合調査の簡単な方法から実践的な方法までをご紹介します。前半は非常にシンプルな内容ですが、後半では上級者向けの内容となりますので、気になる部分だけを読んでいただければ幸いです。

 

検索順位で比較する

比較分析を行う上での鉄則は、Apple to Apple です。”りんごとりんごを比べよ(りんごとみかんでは比べ物にならない)”という比喩で、データの条件を揃えることを意味します。ひとくちに「トラフィック」といっても、Google Analytics と Search Console ですら異なる値を表示します。そうなると競合サイトを分析するのはますます難しくなります。競合サイトのデータをばらばらのデータソースから取得しているとしたら、その分析はあまりあてにならないでしょう。

自然検索においては「検索順位」という普遍的な指標があるので、これを使って比較していくのが一般的です。例えば、「ラーメン」というキーワードの順位を用いると複数のサイトを下記のように整理することができます。データソースは「筆者の目」です。上から一つ一つ指差し確認をしてカウントしました。

 

想定流入で比較する

もう少し分析の解像度を上げていきましょう。検索順位から推計されたトラフィックを「想定流入」と言います。検索順位に対して検索ボリュームと一意の CTR(クリック率)をかけ合わせて算出します。1位のCTRを30%、2位を12%、3位を9%と仮定すると、下記のように想定流入を算出し比較することができます。数字を比較したいので、表の見せ方も少し変えてみます。それぞれのサイトの実力がわかりやすくなりました。

想定流入は実際のトラフィックとは異なるかもしれませんが、それでいいのです。3サイトとも同じ条件で比べているので、これは妥当性のある分析といえます。分析とは、同じ条件で比較したときに見える「差」が大きなヒントになるからです。

 

想定流入を足し上げてグラフ化する

サイト全体で比較することは、多くの場合あまり意味がありません。取り扱っている商材やターゲットが、会社ごとに異なるからです。例えば、グルメ関連のキーワードを全部調べ尽くしたときの想定流入は下記のようにグラフ化されます。あらゆる料理をカバーする食べログやRettyに比べて、ラーメンデータベースはすごく弱く見えてしまいます。グルメ市場全体を見る場合にはこれでもいいのですが、ラーメン領域について分析するのであれば、これはApple to Appleではないといえます。

同様に、ソニーとパナソニックを比較するとか、トヨタとホンダを比較するといったときに、こうした問題が発生します。ゲーム機はソニーにしかない、トヨタはバイクを作っていないといった事業展開の違いがあるからです。

Apple to Apple じゃないのでほとんど意味のないグラフになってしまった

 

想定流入をグルーピングする

ラーメンデータベースのSEO担当者であればラーメン領域だけを見たいはず。食べログにとっても、ラーメン領域だけを切り出してみることは有益でしょう。そこで重要なのがキーワードのグルーピングです。ラーメン関連のキーワード群をまとめてみましょう。家系ラーメンの関連キーワード、つけ麺のキーワード、「ラーメン 渋谷」などのエリア掛け合わせ…様々な軸からキーワードをグルーピングできます。それらを可視化すると下記のようになります。

ようやくマーケティングの実践で使えそうなグラフになってきましたね。ここまで解像度の高いデータがあれば、このキーワードグループを強化するべきだとか、こっちのキーワードグループが狙い目だといった戦略が立てられるようになります。見るべきキーワードをグルーピングして、Apple to Appleな状態にしたとき、初めて意味のある分析になるのです。

 

市場全体を可視化

DemandMetricsは上記のような検索マーケティングのためのツールです。狙うべきキーワード群を設定すれば、あなたの市場がどうなっているのかをモニタリングしてくれます。例えば、あるサイトオーナー様が見ている自動車市場の状態を見てみましょう。2021年の6,7月頃に順位の下落と上昇が確認できます。これはあくまでも「あるサイトオーナー様の視点」です。世界的な自動車メーカーさんや地域密着型の中古車ディーラーさんであれば、異なる勢力図が見えてくるでしょう。

 

下のグラフは家具ECを展開するサイトオーナー様から見た検索マーケットです。家具以外のECモールが強いですね。急上昇しているサイトもいくつかあります。気になるサイトを一つずつ確認したところ、Core Web Vitals(CWV)と呼ばれるパフォーマンス指標が要因になっていそうだということがわかりました。CWVはあまり意味がないと言われることもありますが、このサイトオーナー様にとっては重要な要因だったのです。

 

木を見て、森も見る

検索市場の全体像を掴んだら、あらためて個別のキーワードにも注目しましょう。マーケティングは木を見て、森も見る仕事だからです。DemandMetricsなら過去のSERP(検索結果画面)をモニタリングすることも可能です。データを見ても釈然としないときにはSERPをチェックすると答えが見えてきます。例えば、下記のSERPをご覧ください。以前に比べて最近は広告枠が大きくなっています。また、「人気商品」という枠が登場したので、Amazonは7位から6位に上昇しているにも関わらず「位置」は下の方に移動してしまいました。ほかにもタイトル・ディスクリプションなど様々な変化が見て取れます。

 

検索マーケティングにおけるビッグデータ活用

発展的な取り組みをするクライアント様は、すでに検索マーケティングにおいてビッグデータを活用しています。検索順位だけでなくあらゆるデータをSERPから取得し、データウェアハウスに蓄積するのです。DemandMetricsでは検索結果画面の大きさや距離、その他 400以上の要素が取得できるため、データサイエンティストのお客様にもご活用していただいています。SERPがリッチになるにつれ検索順位の有用性が低くなっており、上部からの距離(Y Axis)やスニペット自体の大きさ(Height)などの新しい指標が注目されています。大量のデータをコンピューターに取り込み競合分析をすると、今までにないインサイトを発見することができるとのお声もいただいております。

 

正しく比べて適切な打ち手を

前半では検索順位を用いてトラフィックを推計したり、それらをグルーピングする方法をご紹介しました。後半はやや上級者向けですが、DemandMetricsを使った分析手法をご紹介しました。いずれにしても、正しく競合サイトと比較することが大切です。バラバラのデータソースを組み合わせたり、グルーピングせずに比べていると、なかなか検索マーケティングはうまくいかないのです。

検索マーケティングについて気になることがあれば、ぜひ当社までご相談ください。